問われているのは監査品質と緊張関係だ。公認会計士の資格を持つある大手食品メーカーの監査役は、「大手監査法人の技術にはほとんど差がない」としたうえで、「決め手となるのは監査チームの品質と健全な緊張感を保てるかだ」と説明する。
新日本監査法人には出資するパートナー社員が656人、業務を行う職員も含め、約6200人が在籍する(内、公認会計士は約3500人)。これだけの大所帯ならば、担当者によって、監査品質にバラツキが出る。「監査先から報酬をもらうという微妙な立場にありながら、会計処理をめぐっては対立することもある。緊張関係を保つのは難しい」(前出の監査役)。
長すぎる契約期間が緊張感を失わせる
監査する上場企業は約930社存在する。その本決算の時期の内訳は、12月期が約90社、2月期が30社強、3月期が700社弱だ。
2015年12月以降、新日本監査法人から交代を決めた上場企業は、14社にとどまった。
最も多いのは、東芝グループ7社で、東芝本体は2015年12月に、「新日本監査法人から来年度の監査契約を締結しないと申し出があった」と発表。上場する子会社や関連会社も含めて、東芝グループ全体でPwCあらたへの交代を決めた。
ほかの企業は、何が交代の理由だったのか。
富士フイルムHDは「任期満了」以上のことは明らかにしていないが、「50年以上の付き合いがあったことは確か」(同社)という。人材紹介業中堅JACリクルートメントの監査役会は「監査期間が12年を超えており、将来のローテーション制導入も視野に入れて、交代を決めた」と書面で回答。やはり、長すぎる契約期間が緊張感を失わせていることを懸念している、といえそうだ。
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