「初音ミク」現象が拓く“共感”力の新世界

伊藤博之・石川康晴・猪子寿之 特別鼎談

 初音ミクの正体は何か。言ってみれば、初音ミクって一つの「側」(外枠)でしかない。緑色の髪の長い女の子、という一つの共通認識。そこから多種多様なアウトプットが出てくる。

クリエーティブなことをしたいと思っている10万人、もしかしたら100万人規模のクリエーターたちの「プラットフォーム」なんです。

そして、そこから生まれるものに共感し合うコミュニティでもある。

猪子 マスメディアが中心だった20世紀までは、みんながハリウッドの1人のスターを見ていた。しかも単に受け身で見ているだけ。ところが、情報化社会では(インターネットの)ユーザーの一人ひとりが発信者であり、受け手になる。でき上がったものを受け身で観賞するのではなく、ユーザーが自ら初音ミクを表現し、発信できるようになった。

かつて情報源は新聞だったけれど、今はフェイスブックやツイッターで情報交換するのと同じ。ハリウッドスターが初音ミクに代わったということです。

──石川さんのクロスカンパニーは今春、初音ミクとコラボレーションしたファッションブランド「ジャパンレーベル」を立ち上げた。初音ミクをモチーフとして描くイラストレーター、いわゆる絵師さんの起用が話題になりました。

石川 イラストレーターも含め、初音ミクの周辺には50万人くらいのクリエーターがいるのではないか。すでに名を成したプロのクリエーターよりすごい能力、技術力を持っているのに、そうした人たちはニッチな領域に押し込まれていた。その人たちが表舞台に出てくるキッカケを作ったのが初音ミク。生意気な言い方をすると、僕は彼らをさらに表舞台に押し出すためのサポーターになろうと思っています。

今、クロスカンパニーの主力ブランド「アースミュージック&エコロジー」の店舗は国内200、台湾に20以上。このチャネルを使ってクリエーティブな人材の活躍の場を世界に広げたい。知られざる能力を正当に評価し、一緒に価値を作っていきたい。マスの人が彼らの価値を軽視していることが歯がゆくて……。ある種、使命感のような思いがある。

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