新型ワゴンRで試されるスズキ国内販売の「真価」
下のグラフを見てほしい。スズキの国内とアジアの営業利益を比較したものだ。同社は成長著しいインド市場で4割以上のシェアを握ってきた。だが、近年は競争激化やストライキで収益が伸び悩んでいる。7月にはインド工場で死傷者が出る大規模な暴動が発生、現在も正常稼働のメドは立っていない。
そんな中で収益の改善が目覚ましいのが、国内セグメントだ。同セグメントにはインドからのロイヤルティ収入なども含まれるが、国内販売の利益が大半を占める。
さいたま市北区のスズキ販売店。店内では「ファンネット宣言」と書かれた看板が目を引く。スズキファン=固定客を増やすために、店舗が取り組む活動をまとめたものだ。
「大切なのは台数ではない。自社の管理顧客をいかに増やすかにある」(田村副社長)。台数を追うと、値引きに走る。値引きで取った客は、値引きで取られる。田村副社長は販売店の管理数値を台数から管理顧客数に変え、収益重視に舵を切った。
埼玉県東部で16店を展開するスズキ自販埼玉の鈴木田賀志社長は、「メーカーから特別リベートがいっさい出なくなった」と笑う。値引きの「原資」が限られるので、販売店もやり方を変えざるをえない。採算度外視の値引きや、販売店が車両を買い取る「自社登録」など、無理な販売は影を潜めた。スズキ自販埼玉では月次の損益を従業員にも開示、利益重視の姿勢を徹底させた。
その一方で、自社の顧客リストを再度見直し、販売員から顧客の元に出向く訪問活動を再開した。ノルマは販売員1人につき、月100件の訪問。何も新車を販売する必要はない。定期点検、車検、さらには車の様子を聞くだけでいい。その結果、この2年で管理顧客は実質約2割増加。そして補修部品の販売や、点検・車検などサービス売り上げが拡大、収益を下支えした。
さらに改善したのがキャッシュフローだ。中古車の在庫を3~4割削減。また新車販売における債権管理をルール化、法人向け販売を中心に、500万円以上の売掛金を原則禁止とした。現在スズキ自販埼玉は、実質無借金になっている。