脳卒中からの回復は脳画像の読解力で決まる 適切なリハビリを行うために必要なこと

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希望をつなぐのは質の高いリハビリです(写真:【Tig.】Tokyo image groups)

「がん」「心筋梗塞」「脳卒中」といえば日本人の死亡理由のトップ3に挙げられ、「三大疾病」ともいわれる。この春に会社に入った新入社員をはじめ、生命保険の加入を検討したり、勧誘されたりした経験のある人なら、三大疾病にかかった場合に一時金が支払われる保険や特約の存在を見聞きしたことがあるだろう。

このうち脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳卒中は、脳の血管が詰まったり、破れて出血したりする病気だ。脳のネットワークが壊れてしまい、その程度に応じて身体の麻痺や言語・意識障害などの後遺症が出てしまう。交通事故などで強く頭を打った場合にも脳挫傷などで脳の機能が壊れてしまう(脳損傷)ことがある。

後遺症からの回復は質の高いリハビリ次第

ある日当然、家族が脳卒中や脳挫傷になったらどうなるか。多くの人はなすすべがない現実を思い知らされる。ただ、まったく希望がないワケではない。適切なリハビリテーションを行えば、脳損傷の患者であっても一定程度の人間力を回復(人間回復)できる。逆に心身ともに安定した状態でベッドに横たわる安静臥床を3日間以上続けてしまうと、さまざまな心身の機能が低下する廃用症候群になってしまう。

私は脳神経外科医を経て、脳リハビリテーション医として攻めのリハビリを実践している。患者の年齢や病前の認知機能と体力、発病後の廃用症候群の程度などを把握するとともに、欠かせないのがCT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴断層撮影)などで得た脳画像の正確な診断と脳機能の適切な評価だ。

脳卒中や脳損傷へのリハビリは「疾患」以上に「機能障害」に着目する必要がある。疾患名が同じでも機能障害は患者によって異なる。その違いが脳画像に現れる。

私は2013年にNHKで「プロフェッショナル~仕事の流儀~第200回 希望のリハビリ、ともに闘い抜く リハビリ医 酒向正春」に出演し、大きな反響を得た。それをきっかけとして監修した『コツさえわかればあなたにも読める リハに役立つ脳画像』(大村優慈著、メジカルビュー社)に詳しく解説されているが、「脳のどの部位が壊れているか」だけでなく「脳のどの部分が健全なのか」を診断しなくては、脳機能のどこが残っているかが評価できず、質の高いリハビリができない。

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