【産業天気図・12年4月~13年3月】震災や洪水影響なく反動増期待も、中国中心に世界景気後退、円高定着も痛手で「曇り」目立つ

拡大
縮小



 快晴=空前の活況で懸念材料なし。業界全体が増益へ
 晴れ=主要各社が増益。懸念材料が消えれば「快晴」へ
 曇り=市場環境や成長性に陰り。主要各社が収益横ばいか減益。回復か一段悪化か微妙
 =競争激化や市場縮小で環境厳しく、主要各社が大減益か赤字
 土砂降り=従来より業績見通しが悪化、回復のメドが立たない

主要業種の天気予報図
(下線付き業種名をクリックすると詳細記事にジャンプします)
業種名 天気 天気概況
12年4~9月期(前半) 12年10月~13年3月期(後半)
建設業 晴れ 晴れ がれき処理、除染など復興関連はまだ序の口。被災地以外の需要は都市部中心に耐震補強や老朽化対策が動く。首都圏マンション需要も上向くが、地方需要が芳しくない。建設労働者の被災地集中で賃金高騰も悩み。
食品 雨 曇り 加工食品、調味料など中心に震災後の買いだめ需要剥落による数量反動減。加えて低価格競争が激化、販促費も膨らむ。12年度後半から世界的な穀物相場高の影響が波及、油脂など原材料が高騰し一段の収益圧迫懸念も。
紙・パルプ 曇り 曇り 11年秋来の値上げが12年5月までに決着だが、数量は輸入紙に押される。12年4~9月は原油・パルプ価格軟化で原紙などは収益堅調。10月以降は海外需要期で輸入圧力減でも接着剤原料コーンスターチ高騰懸念。
化学 雨 曇り 液晶パネルや半導体、太陽電池など向けの電子材料は前期に続いて前半低調。化学品も世界景気減速の影響を受け上期は需要や市況軟調。後半は電子材料や化学品市況の持ち直しが見込まれるが回復はやや緩慢か。
化粧品・トイレタリー 曇り 曇り 化粧品、トイレタリーとも国内の低価格化路線は変わらず。ただ洗濯用洗剤では「香り付き」や「超濃縮」等高付加価値品がウケているなど健闘するカテゴリーも。新興国では中間層開拓が次なる成長のカギとなりそう。
医薬 曇り 曇り 国内は薬価引き下げ(▲6%)と後発医薬品普及促進策に伴う長期収載品の売り上げ減少が顕在化。大手は米国での主力品の特許失効の影響続く。抗がん剤やワクチン強化、M&Aによる新興国開拓進めるが正念場続く。
石油 曇り 雨 原油価格下落により、下流の精製・元売り各社では石油製品の在庫に巨額の在庫評価損が発生。上流の石油開発も採算が悪化。原油価格の下落が一服しても、国内需要の長期縮小傾向に歯止めかからず状況厳しい。
ガラス・セメント 曇り 曇り ガラスは、液晶と太陽光向けが市況悪化で利益貢献度合いが後退。建築と自動車用のガラスも、政府の普及策打ち切りで勢いが鈍るおそれ。セメントは復興計画遅れで期待ほどの数量増には至らず。利益伸び悩む。
鉄鋼 雨 曇り 自動車向け数量増。首都圏再開発案件など建設向け底打つが造船向け縮小。建機向けも回復遅れる。鉄鉱石や原料炭の主原料価格弱含むが、アジア市況悪化、輸入材流入あり販価軟化が想定超。上期中心に在庫評価損発生。
非鉄 曇り 曇り 新興国の需要増を背景に上昇が続いた非鉄金属価格だが、ここに来て下落基調で、資源開発や製錬の収益の足かせに。需要は自動車向けは回復基調だが、電子材料は全般的に低調。業績の本格回復は先になりそうだ。
工作機械 晴れ 曇り 年度前半は豊富な受注残の消化で、増収増益を達成する会社が大半となる見込み。一方、年度後半から13年にかけてはタイ洪水の復興特需も剥落。欧州やアジア向けの景気減速が長期化することで、収益が悪化しそうだ。
建設機械 曇り 曇り 11年春先から最大市場の中国が低迷中。資源価格の弱含みで、躍進を続けてきた鉱山機械も伸び悩み局面に。復興需要や新興国向けは好調だが、業界が本調子を取り戻すのは中国の回復を見込む13年度以降になりそう。
重電 晴れ 曇り 中国の景況感悪化しFAや建機などに減速感。ただ、日立、東芝、三菱電機の重電3社は高水準の利益を維持。日立は海外電力のトラブル解消がプラス。半導体苦戦の東芝もインフラ関連は堅調。三菱もFA軸に底堅い。
電子部品 曇り 曇り 自動車向けは国内メーカーの好調背景に増。スマホやタブレット端末向けも好調。ただテレビ等AV機器向けが大幅に縮小など市場はまだら模様。地域別では欧州、中国向けが鈍い。アジアメーカーとの価格競争も激化。
家電・AV 雨 曇り テレビの低迷続く。デジタルカメラなどがスマートフォンに侵食される一方、日本メーカーは総じてスマホで大苦戦。太陽光パネルや電池関連も価格競争激化。12年後半にかけてリストラで改善するも晴れ間は見えず。
半導体 雨 曇り エルピーダの倒産に続き、経営危機のルネサスエレが大リストラに突入。資本増強に向けた同社救済案や富士通含む再編の動きが引き続きの焦点。誤算はNANDの市況悪化で、東芝が減産。装置メーカーにもブレーキ。
自動車 晴れ 晴れ 震災やタイ洪水影響から脱し、高水準の生産続く。円高が依然重荷、中国市場の伸び率鈍化だが、北米と東南アジアの回復が続く。日本勢はホンダ「アコード」など主力車種のモデルチェンジでシェア挽回局面にある。
造船・重機 曇り 曇り 受注が徐々に戻り、重機の業績まずまず。が、住友重、川重は中国の建機需要減速が逆風に。造船バブル時に受注した好採算船の引き渡し進み、造船は採算低下。中期での操業度や業績を左右する新規受注は、船価暴落に加え、案件自体も乏しい。
精密機器 晴れ 曇り 震災やタイ洪水の影響から脱して回復基調。欧州市況の悪化や円高の定着など先行きに懸念あるものの、事務機器中心に全体としては緩やかながら成長が続きそう。デジカメでは一眼レフが躍進の一方、コンパクトは苦戦。
商社 晴れ 曇り 鉄鉱石、原料炭などの資源価格低下の影響を非資源部門の伸びで補うシナリオだったが、中国経済の減速がじわじわと効き始めている。特に鉄鋼の軟化は資源を直撃する。会社計画利益の超過達成は難しくなってきた。
スーパー・コンビニ 曇り 曇り 前半に震災直後の買いだめ特需剥落。後半も消費環境は不良で、優勝劣敗による二極化がさらに進む。コンビニは上位好調でも、下位に行くほど苦戦。スーパーでも明暗分けリストラも。勝ち馬選びの動きが活発化しそう。
銀行 曇り 曇り 貸出金は企業の資金需要鈍く、住宅ローンも競争激しく、伸び悩む。貸し出し、有価証券とも利回り低下が圧迫。資金運用収益は低下。手数料収益も投資信託の販売は相場が不冴えで低調。企業倒産少なく与信費用は低水準。
証券 曇り 雨 世界的な証券規制が発動される可能性が高く、市場規模が縮小する懸念がある。長期化する欧州危機を含めてマクロ経済も不確実性を払拭できない。
損保 曇り 曇り タイ水害の影響は消えるが、前半、自然災害が多く、中盤以降の台風次第では支払保険金が計画超過の可能性も。株式評価損も重荷。自動車保険は販売台数の好調で堅調だが、エコカー補助金制度が切れる後半は不透明だ。
鉄道・バス 晴れ 晴れ 震災の悪影響消える。関東は電力値上げあるが、スカイツリー開業や渋谷ヒカリエ、東京駅復元などで首都圏に観光需要が発生。旅行なども活況で新幹線中心に長距離利用客の伸びが想定超。京成、小田急などで最高益。
住宅・マンション 曇り 晴れ 低金利や住宅ローン減税などの取得優遇策が下支えするが、景気の先行き不透明感が影を差し、地合いは良好とは言いがたい。とはいえ、来年にかけて消費増税前の駆け込み需要が見込まれ、短期的には追い風となりそうだ。
ソフトサービス 曇り 晴れ 一般企業の社内システム更新は大型案件少ないが、通信事業者によるトラフィック増強の投資積極化が追い風。みずほ銀行とコーポレート銀行のシステム統合も後半本格化。リーマンショック後停滞していたが回復の兆し。
電力・ガス 雨 雨 電力は原子力発電の再稼働見通しにくく、当面は火力稼働増に伴い燃料費が膨張。原子力損害賠償支援機構への負担金も重く業績は底ばい状態続く公算。ガスは震災以降続いた省エネ機運後退。販売量上向き、回復基調か。(※天気図は電力)
海運 雨 雨 コンテナ船、貨物船という2つの収益柱のうちコンテナ船は運賃が底入れ傾向。だが、貨物船は鉄鉱石原料など大型船の運賃が採算割れ水準まで下落長期化。新造船の増加が続く13年までは貨物船運賃の回復は期待薄。
空運 晴れ 晴れ 今年の夏休みは国内線の搭乗率がやや低下したが、円高背景の海外旅行人気で大手の高収益続く。12年度後半も新規路線含め順調。ただ欧州問題が深刻化すると世界の航空需要に大影響を与える可能性が高く要注意だ。
情報・通信 晴れ 晴れ 市場は若干伸びる程度。携帯各社は3GからLTEサービスに移行する顧客多く、データ通信収入伸び高水準続く。固定は光回線の伸び鈍りNTT東西厳しい。が、KDDIやケイ・オプティコムは低価格テコに堅調続く。
人材サービス 晴れ 曇り 縮小続いた派遣市場は底打ち感。規模の大きい上場企業などは業績改善傾向。特に製造派遣・請負は震災戻りが追い風。技術者派遣も稼働は高水準。客先の経営悪化は短期的には需要にプラスだが、中期ではマイナス。
アパレル 晴れ 曇り 消費の本格回復は見込めないが、震災影響がなくなり春物衣料が回復。セールの後ろ倒しなどで、値引き販売の期間が短縮され採算も向上。低価格帯アパレル中心に、中国はじめ海外進出が拡大、収益貢献が本格化。
外食 曇り 曇り 震災影響が一巡。客数回復鈍く会社想定よりも書き入れ時の夏休みが全般に苦戦。後半も鈍く既存店は前年割れ濃厚。特に前年好調だったファストフードは洋風・和風とも苦境。居酒屋やファミレスは底打ちだが伸び悩む。
放送・広告 晴れ 晴れ 震災の影響一巡し、好採算のテレビスポット広告が回復。スポット枠上限に近づき単価向上も。番組提供のタイム広告も底打ち。テレビ中心のマス広告回復に加え、インターネット広告の市場拡大続く。海外にも積極展開。
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