社会を作る楽しさを人々は忘れかけている--『社会を変えるには』を書いた小熊英二氏(慶応義塾大学総合政策学部教授)に聞く

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それによって、「自分を選ぶ」「相手を選ぶ」「政治を選ぶ」「社会を選ぶ」のではなく、「自分を作る」「相手を作る」「政治を作る」「社会を作る」ことができる。そのほうが満足度は高い。そのことを、日本社会の歴史的構造分析や、ポスト工業化や再帰性、さらにはプラトン以来の政治哲学などを応用して、解き明かしたのがこの本だ。ただ脱原発運動だけについて書いたのではない。

──社会運動の諸理論も紹介していますね。

運動のノウハウは、ビジネスにも使えると思う。現状分析を踏まえて、どういう社会を作れるか構想を立て、具体的な実践方法を考えるのが、運動というものだからだ。ビジネスも同じ。米国の社会運動理論の研究者は経営学に詳しい人も多い。

──本書の結びは、読者個々人に投げかけて終わっています。

考えるための材料は、社会学、経済学、戦後史、哲学など、いろいろ提供した。だから、あとは読者一人ひとりに、その材料を基に、自分で考えてほしい。そこで私が「正しい答え」を述べたら、自分で考えて自分で行動することにならない。社会を変えるには、自分が変わり、自分が動かなければならないのだ。

おぐま・えいじ
1962年東京都生まれ。東京大学農学部卒業後、出版社勤務を経て、東大大学院総合文化研究科博士課程修了。2007年より現職。著書に『単一民族神話の起源』(サントリー学芸賞)、『〈民主〉と〈愛国〉』(毎日出版文化賞、大佛次郎論壇賞)、『1968』(全2巻、角川財団学芸賞)、『日本という国』など。

(聞き手:塚田紀史 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2012年9月15日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

『社会を変えるには』 講談社現代新書 1365円 517ページ


  
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