喫緊の課題は、憲法改正を進めるに当たり、誰を事実上ロシアの占領下にあるこの地方の代表者と認めるかである。ロシア政府は当然、ロシアの後押しで権力を手にした親ロシア派のリーダーを代表者と認めたい。一方ウクライナは、ロシア政府の主張に反発し、憲法改正を議論の前提条件として、同地域での選挙実施を求めている。ミンスク合意と完全に一致するスタンスだ。
目下、誰がその選挙を取り仕切るのか、どんな条件下で選挙を実施するのかについて、熾烈な外交合戦が繰り広げられている。親ロシア派のリーダーたちは、 ウクライナの他地域の政党の関与を望んでいない。戦闘が原因で各地へ散った150万人の避難民にも投票権を与えたくないと考えている。しかし、こうした条件ではEUや米国に受け入れられるはずがない。
ミンスク合意に基づく和平プロセスの前進には、何らかの国際組織による選挙管理が必要だろう。しかしその準備には時間がかかる。今夏までに実現できる可能性は低い。
ロシアにとっては、ウクライナ東部紛争を本気で解決しようとすれば、選挙実施への合意は難しくないはずだ。もちろんウクライナ東部の支配者たちは反発するだろうが、プーチンが率いるロシア政府は、合意反対派の扱いには慣れている。
もう一つの課題は国境管理である。ロシアはドンバスを占領している軍事組織に物資支援を行っている。それに対しウクライナ政府は、憲法改正の前提条件として、自国による国境管理の回復を主張している。これは当然の主張といえよう。
経済制裁の効果を再認識すべき
西側諸国はロシアへの経済制裁の効果をあらためて認識すべきだ。ロシア政府は平静を装っているが、実際には深刻な打撃を受けている。しかもロシアの石油埋蔵量は今後10年間で半減するとの予測もある。ロシアは制裁が続くかぎり、新たな石油開発の技術には手を伸ばしにくいのが実情だ。
欧米はロシアとウクライナ政府の和平プロセスの棚上げを許容してはならない。仮に許容すれば、今後も小競り合いが続き、突如として深刻な事態に転じる可能性もある。それは誰の利益にもならない。
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