ものづくりからの復活 円高・震災に現場は負けない 藤本隆宏著 ~良い現場を日本に残すためにどうすべきか

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著者は「ものづくり」とは、「設計情報」が顧客に消費されるまでの流れ全体を指す概念である、と繰り返し説明しているが、大切なのはその辺の理解だろう。中小企業を含めて海外展開はいまや当たり前となっているが、「日本のマザー工場」が、全体の流れをたえず改善し、「リードタイム勝負やソリューション(サービス内容)勝負に持ち込めれば」活路はあると著者はいう。たしかに海外の現場にとって、日本の現場が手本であり続けることが重要だ。それは製造業だけの問題ではない。

なお著者は法人税に関して「国内雇用を維持する企業に税率引き下げを」と主張しているが、至当である。投資銀行などの法人税を引き下げるのは無意味だろう。大切なのは 雇用を生じさせる「現場」である。

「擦り合わせ」や「能力構築」をはじめとして、ものづくりのキー概念を確立してきた著者の渾身の著作だけに、日本の今と近未来のあり方を考えるうえで必読である。著者の本はいつも大著だが、今回もまたこのボリュームはやむを得なかろう。

ふじもと・たかひろ
東京大学大学院経済学研究科教授兼ものづくり経営研究センター長、組織学会長、進化経済学会長。1955年生まれ、東大経済学部卒業。三菱総合研究所を経て、ハーバード大学ビジネススクール博士課程修了(D.B.A)。専攻は技術・生産・経営管理論。

日本経済新聞出版社 2940円 493ページ

  

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