――日本企業は多くの製品、商品群を持っていることで有名ですね。日本企業へのアドバイスはありますか。
そうですね。最近、靴の会社に対するコンサルティングの仕事がありました。私の調査アシスタントが覆面調査員のような形でお店に行って、「ボーイフレンドのために靴を探している」と言って、どうしたらいいかわからないといった感じでセールスマンに質問してみました。
すると、たくさんの靴を勧めてくれるんですね。それで、「どれを私は選んだらいいの」と尋ねると、セールスマンは「好きなのを選べばいい。あなたが、ボーイフレンドに似合うと思うのを選べばいい」と答えます。そういう問答を繰り返すんです。しかし、別の店では、あるセールスマンが、ちゃんとこの靴とこの靴は違うと教えてくれました。そうすると、選択の幅は狭くなります。
消費者としてみれば、そういう違いを知っている人のところにいって、教わって、選択肢を減らしてもらうのが一番いいんです。
ドラマチックすぎて違いがかえってわからない
――「選択」といえば、米国では今、大統領選が白熱してきています。「選択」の研究に絡めて、みてみるとどうでしょうか。
クレイジーなことが起きていますね。
――選択の理論の観点からみて、トランプ現象をどうみていますか。
いろいろありますが、まず、トランプ氏はほかの候補者とまったく違うので、ほかのたくさんの候補者との違いがかえってわからなくなっています。
たとえば、桜色にもいろんな桜色があります。グラデーションがありますね。そこで、あなたに5つのグラデーション見せたとします。そして、その隣にすごく明るい真っ赤を置きます。5つともすごく美しい桜色なのに、あなたの目はこの明るい色に惹きつけられてしまうでしょう。赤いトランプ氏があまりにドラマチックなので、ほかの人との違いが見えない。わからなくなってしまうんです。
それでは、この圧倒的な人が、人々になぜ悪く受け止められないのか。(とくに)若いアメリカ人は、その人がいま、ここで言っていることが本心だ、という風に感じています。それは事実と違うかもしれないし、もしかしたら後で考えを変えるかもしれない。その人が今ここで言っていることが本心だと相手が感じる。だから、人はトランプが好きになってしまうんです。
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