「選択の科学」からみたトランプと大統領選 "選択"の専門家・アイエンガー教授に聞く

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――日本は多党制です。でも、有権者は投票する政党や候補者の選択肢がないと言って、アパシー(無気力)に陥っています。

さきほどの靴の例と同じですが、選択肢が2つあろうが、100個あろうが、違いがなければ選択はできないわけです。

――その違いを日本の政党は出せていない?

まあ、有権者はそう言っているということですね。選択肢が多すぎるというのは、よくないのです。三つが理想だと思います。五つだと多すぎる。三つだと、だいたい自分の頭の中で整理できるけれど、五つになると、まず一つか二つは捨てないと。そうしないと考えにくい。

――日本は過去20年ほど、二大政党制を理想としてきました。それは誤りなのでしょうか。

選択肢がAかBかだけだと、クリエイティブでなくなります。AとBの二つしかないときは、違うということは簡単ですが、Cという選択肢が現れると、CがA、Bと違うということを主張するには、創造的になる必要があります。

――政党が三つで競い合った、理想的な国はあるのでしょうか。

とくにはないです。今までそういう国があったわけではないでしょう。

留学しないのはインセンティブがないから

――最後に、最近の日本の若い人についてお聞きします。就職に不利になるからといって、留学したがらない若者が増えているようです。選択の理論からすると、逆行しているように見えます。

もちろんそうですよね。全然よくないです。安倍首相もコロンビアにきて、留学生が少なくてダメだ、けしからんとおっしゃっていました。

日本もフルブライト奨学金のようなものをつくるとか、とにかく若者のインセンティブを上げないと。だって簡単なことじゃないですか。会社も留学経験あれば、新卒で給料が10%あがるといえば、みんな留学するのではないでしょうか。若い人が留学しないというのは、インセンティブがないということなんですよ。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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