信用されない人は「1秒」の想像力が足りない ANA社員が段取りに力を入れるワケ
「想像する」というと少し大げさですが、特別に考える必要はありません。気づかいとは、いわば「くせ」、「習慣」です。慣れてしまえば、歯磨きをするように、毎日、自然とできるようになります。
一歩先の未来を想像するための「準備」
「一歩先を想像する」と言っても、1年先、3年先まで想像する必要はありません。20年以上客室センターに在籍し、チーフパーサーとして乗務している、ANAビジネスソリューション・接遇マナー講師の林靖子は、「常に5秒先の未来を想像している」と言います。
たとえば、飲み物を飲み終わりそうなお客様がいたら、そのタイミングでおかわりを用意するか、紙コップを下げる準備をする。席で赤ちゃんが泣き出しそうであれば、おもちゃをお持ちする。たった5秒先を見通すだけで、できることはたくさんあります。
30年以上整備部門に在籍し、ANAビジネスソリューションでヒューマンエラー対策講師を務める富田典明には、「一歩先を想像する習慣」を体現する上司の思い出があると言います。
「上司のAさんは、常に先を考えて行動していました。社内や社外の会議で何を質問されても、絶対に答えられるのです。新人時代は、なぜこんなことができるのか、不思議でたまりませんでした」
でも仕事ぶりを見ているうちに、それが緻密で周到な準備の上に成り立っていることがわかってきたと言います。
「部下である私たちにも『次回はこういう質問がくるだろうから、ちゃんと検討しておけよ』とよくアドバイスをしてくれました。それで、実際その場になると、まさにAさんが予想していた質問がくるんです」
30年以上整備部門に在籍し、ANAビジネスソリューションでヒューマンエラー対策講師を務める山内敏幸は、部下に指示するときには 「うまくいかなかった未来」を想像して、事前に伝えるようにしていたと言います。
たとえば、機体の部品交換の作業は、その後のフライトの時刻が決まっているため整備士に「時間どおりに仕上げなければ」というプレッシャーが強くかかります。そのような場合は誰でも焦ってしまいます。
だからこそ、悪い状況を事前に想定して、作業を始める前から「遅れそうなら、○○の時点で教えてね」と伝えておくのです。事前に「うまくいかなかった未来」を想像し、部下と共有しておくことで、もしその事態が起きたときも、慌てずに対応することができます。
自分ひとりで行う仕事でも、
・予定どおりに作業が進まない場合