iPhoneSEには、巨大な市場が広がっている 先進国にも新興国にも莫大な需要

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AppleWatchの値下げも発表

iPhone SE、9.7インチiPad Proは、筆者が事前に執筆した通り、現在の製品ラインアップでカバーし切れていなかったユーザーに対して訴求する、戦略上重要な製品と位置づけることができる。

iPhone SEの小型である点、価格が安い点は、4インチの最新モデルを待っていた先進国のユーザーと、よりやすい価格で最新のiPhoneを購入したい中国やインドなどの新興国市場に対して効果的だ。また9.7インチiPad Proは、iPadシリーズの救世主になるべく、より大きなユーザーベースであるPCからの乗り換えを狙う。

40周年を迎えたテクノロジー企業の使命とは?

ティム・クックCEOはアップルが果たしている社会貢献についても言及した

こうしたラインアップの穴を埋める新製品発表は、Appleのビジネスの成長をより確実なものにするだろう。その一方で、プレゼンテーションの冒頭には、40周年を記念し、40秒で振り返るムービーが放映された。

これに続いて、100%再生可能エネルギーを目指し、iPhoneのリサイクルシステムの確立を紹介し、またiPhoneを使って人々の健康や病気の治療を管理する機能を披露した。

テクノロジー企業も、地球環境と人々の健康という、持続可能性が担保となって成立しているとのメッセージだ。そしてトップの企業としてこれに取り組む姿勢を改めてアピールした。常々、アップルのトップは、こうした姿勢に他の企業も賛同して欲しいと口にする。

加えて、FBIとの間で現在問題となっているiPhoneのロック解除問題については、すでにシリコンバレーの多くの企業の支持を取り付けている。ティム・クックCEOは、「顧客のデータとプライバシーを守る責任がある」と改めて表明した。

速報によると、司法当局は、犯人のiPhoneのロック解除を行う方法を見つけたとし、アップルの発表の翌日に控えた裁判所における聴聞をキャンセルを申し出ている。

アップルは、シリコンバレーの中でも、歴史が古く、また人々の多くの関心を集め、iMac以降、多くのテクノロジーのトレンドを作り出す役割を担い続けている。今後も同様の「責任」を背負いながら、成長を続けていくことになるだろう。
 

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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