伊勢志摩サミットで「財政出動」合意は難しい

主要国にはそれぞれ応じられない事情がある

しかし、この予算編成をめぐり、福祉予算のさらなる削減に抗議して、ダンカン・スミス雇用・年金大臣(元保守党党首)が17日に辞表を提出した。ダンカン・スミス元大臣は、EU離脱派でもあり、EU残留とこの緊縮予算の是非をめぐり、保守党を二分しかねない状況だ。そんな中、緊縮予算を編成したオズボーン財務大臣を支持したキャメロン首相が、日本の求めに応じて各国で財政出動を行う内容をサミット首脳宣言に盛り込むことに合意すれば、自らが党首として率いる保守党で内紛を押さえられなくなる。

キャメロン内閣は、2010年に政権を奪還した直後、2011年1月に付加価値税率を17.5%から20%に引き上げる一方、法人税率を引き下げるとともに、年金支給年齢の引上げ、福祉予算の削減、公立学校授業料の値上げなどの歳出削減を行ってきた。そして、2015年の総選挙で保守党は単独過半数を確保して、今日に至っている。イギリスの緊縮財政には、こうした背景がある。

ドイツ、アメリカも財政出動の動機に乏しい

メルケル首相が率いるドイツは、EU内からも批判が出るほどの緊縮財政をとり続けている。メルケル内閣は、2005年の選挙での公約に基づいて(リーマンショックが予見できない中)2007年に付加価値税率を16%から19%へ引き上げた。その後、世界金融危機が発生して一時マイナス成長となったが、2010年には実質成長率は約4%まで回復した。

さらに、欧州財政危機にも直面したが、マイナス成長にはならず、経済成長は持続している。この背景には、ユーロ安もあったが、やはりメルケル内閣の前のシュレーダー内閣期から実施されてきた労働市場改革が大きい。そして、2015年にはついに財政収支は黒字に転じ、国債を新規に発行しない状態となった。財政出動に依存をしなくても、経済成長は可能であることを自認するドイツの取り組みを踏まえると、各国で財政出動を行う内容をサミット首脳宣言に盛り込まれれば、メルケル首相はメンツをつぶされかねない。

オバマ大統領が率いるアメリカは、世界金融危機の際に財政出動を唱えた。しかし、残りの任期を1年切ったオバマ大統領に、日本の求めに応じて財政出動に積極的になる動機は乏しい。オバマ大統領は、任期最後となる2017年度(2016年10月~2017年9月)の予算教書を2月9日に連邦議会に提出し終えている。その上、連邦予算を決める連邦議会は、財政出動を嫌う共和党が支配しており、今年央に財政出動に舵を切る可能性は小さい。

このように、参加国の合意によってまとめられるサミット首脳宣言に、各国で財政出動を行うような内容を盛り込むことは難しいだろう。反緊縮財政を盛り込むことすら、英独の反対に遭うだろう。

では、他のサミット参加国が日本に財政出動すべきと勧めるだろうか。日本の財政赤字は目下、対GDP比で6.7%、約34兆円に達し、サミット参加国の中で最も多い。こんな状態で、イギリスやドイツはともかく、日本が緊縮財政をとっていると言えば、世界の笑いものである。

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