この財政赤字対GDP比の水準は、1999年と同水準である。1999年の日本の首相は、小渕恵三氏。自らを「世界一の借金王」と呼び、大規模な国債増発による財政出動を行った。現時点で、すでに「世界一の借金王」の時期並みに財政支出は出払っているのである。
確かに、公共投資はかなり抑制されてきた。消費税率も8%になった。他方で、社会保障費が大幅に増加している。経済成長を促しても高齢化に伴い社会保障費はそれ以上の増加率で増えていく。これが、現在の財政赤字の構造である。だからといって、公共投資をしたところで人口減少が食い止められないような地域に、公共投資の増額が必要なのか。財政支出の中身を精査すれば、国債を増発しなくても国民のニーズが高い支出は可能だ。
国債増発による財政出動の浅はかさ
マイナス金利を導入して、過去最低水準となった金利で国債を増発して公共投資をすればよいというのも欺瞞である。公共投資を行って造った社会資本の耐用年数は、20~50年である。他方、現在発行している国債の満期は、最長で40年だが過半は5年以下で、過去最低水準の金利を享受できるのは5年ほどしかない。マイナス金利が奏功してデフレから脱却すれば、インフレとなりその分国債金利は上昇する。近い将来デフレから脱却すれば、国債を借り換えるときには高い金利を払わなければならない。
では、今年から50年とか100年の満期で国債を発行すればよい、と思うかもしれないが、そんな超長期の国債を大量に買う金融機関がどれほどあるだろうか。今ある40年満期の国債ですら、大量に買う金融機関はない。売れない国債は出せるはずがない。こうした超長期の国債を日銀に買わせればよいといえども、結局日銀が得られる金利収入が減って、国庫納付が減るから、政府は自分の足を自分で食べるようなものである。
低利の恩恵を受けたいなら、せめて利率が1.5%以上の既発国債を政府が買入消却して、その分を借り換えて、利払い費を節約することぐらいだろう(ただし、国債を保有する金融機関が損を覚悟で買入消却に応じてくれればの話だが)。
国債増発による財政出動をするより前に、できることはまだまだある。
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