●社会とルールになじめぬまま大人に……
自分には、「絵がうまい」とか「漢字ができる」とか「音楽の才能がある」といったものはひとつもなく、身体も弱かった。ものすごく頭のいい子は別にいて、「自分には何もないのかもしれない」とものすごく悩みました。そうなると空想していくしかなくなるのか、絵本が大好きで、空想の中にいるのが好きでした。海も山も近かったし、庭にある木に登ってみたりもした。友達を誘うとある程度までは楽しい。けれど、だんだん人数が増えてくると社会ができて、そうすると一番ではいれない。アイデアを出すのは自分なのに、最後はいじめられる役になっていく。「なんで俺はこうなっていくのだろう」「このまま大人になってからもずっとこうなのかな、優劣はずっとあるのかな」って不安になったこともあります。この不平等感をずっと社会に出るまでひきずっていました。
また、決められているというルールが苦手で、だから、先生に生意気をいったこともあります。
たとえば、自画像を描いたとき、その背景を紫色とピンク色にしたらそれで学校に呼ばれる。なんでそれがいけないのかわからない。社会科見学に行ったときも、自分が興味のないところには長くいたくないし、もっとそこにいたいのに流れていかなければいけないのもわからない。そうでなくても、田舎では割と決められていることが多い。長男はこうして、次男はこうする、女はこう、男はこうする、と。父親が祖父に厳しく育てられたせいか、自分には甘く、何も言わなかった。世の中は厳しいんだ、社会はこうだぞといったことは何も言われなかった。だから、それがだんだんわかってくると、ものすごいプレッシャーを感じましたね。
●いじめられっ子から一転、「ワル」に
学校にもいろんな意味で反発していました。三年違いの姉は優秀だったため、自分も「弟か?」と先生から期待され、比較される。ダメなやつだとなると、「小林先生の息子なのに」「弟なのに」といわれ、それをはねのける気持ちも自分にはなかった。子どもらしい無邪気さというものは持ってはいたけど、そうじゃないものが気になり、無邪気心を自ら圧迫していた気がします。自分のアイデンティティを出すには一度壊さなければいけない…と。中学二年生頃からだんだんグレていきました。
中学に入学するときは身長が135cmしかなく、全校で女の子もいれて3番目くらいに小さかった。それがバレー部に入り、中学三年生頃から高校に入るくらいまでの間にものすごく背が伸びました。身体が大きくなるということは、男のなかではかなり精神的に楽になる。前より強くなり、負けない。運動能力も高まり、足が速い、バレーがうまいといったことで認められる。この頃から、男社会のあり方というのは、結局強いと勝ちかよ……みたいに思っていたし、いじめられるのであれば、いじめる側にまわればこうなるんだということもわかり、昨日までああいっていたやつが急に態度が変るということを生生しく見て、いいことだとは思わなかったけど、こうすればいいんだなということがわかってきた。そうなると急展開でいじめる側に、それも小さい頃にいた「わんぱくな親分肌」ではなく、裏に回ったものすごく悪い奴になっていく。ものすごく悪いことを企画するけど、表には絶対に出ない。そんな存在になっていましたね。
そんな高校時代の担任の先生というのが陸上部の顧問をしていた、若い、やる気のある人だった。俺のことをわかろうとしてくれた先生で、「お前、どうしたんだ」と呼び出され、声をかけられたり、学園祭があるからと呼ばれ、「あっちの高校とこっちの高校が来るからお前、頼むな」とそんな役を任されたりしましたね。
小林崇<こばやし・たかし>
1957年静岡県生まれ。ツリーハウスクリエーター。
スタイルとデザイン、感性をコンセプトにしたツリーハウスを創作する日本のツリーハウス第一人者。
'94年、ツリーハウス建築の世界的権威ピーター・ネルソンに出会い、毎年オレゴン州で開催されるツリーハウスの国際イベント「WTC(World Treehouse Conference)」に日本から唯一参加するようになる。世界中のツリーハウスビルダーや樹木医と交流しながら、最先端の技術やデザイン、樹木学等を学び、ツリーハウス情報を共有している。
2000年、ジャパン・ツリーハウス・ネットワーク(JTN)を立ち上げ、'05年には有限会社ツリーハウス・クリエーション(THC)を設立。
沖縄から北海道まで、各地の風土・樹木に適したツリーハウスの制作にあたっている。
また、東京・原宿の木造アパートを、路地裏に立つヒマラヤスギを取り囲むような空間に改装。現在は、ツリーハウスの情報を発信し、グッズ購入や飲食なども楽しめるサロン「HIDEAWAY」として運営。http://www.treehouse.co.jp/hideaway/
1957年静岡県生まれ。ツリーハウスクリエーター。
スタイルとデザイン、感性をコンセプトにしたツリーハウスを創作する日本のツリーハウス第一人者。
'94年、ツリーハウス建築の世界的権威ピーター・ネルソンに出会い、毎年オレゴン州で開催されるツリーハウスの国際イベント「WTC(World Treehouse Conference)」に日本から唯一参加するようになる。世界中のツリーハウスビルダーや樹木医と交流しながら、最先端の技術やデザイン、樹木学等を学び、ツリーハウス情報を共有している。
2000年、ジャパン・ツリーハウス・ネットワーク(JTN)を立ち上げ、'05年には有限会社ツリーハウス・クリエーション(THC)を設立。
沖縄から北海道まで、各地の風土・樹木に適したツリーハウスの制作にあたっている。
また、東京・原宿の木造アパートを、路地裏に立つヒマラヤスギを取り囲むような空間に改装。現在は、ツリーハウスの情報を発信し、グッズ購入や飲食なども楽しめるサロン「HIDEAWAY」として運営。http://www.treehouse.co.jp/hideaway/
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