上場企業には「不祥事対応の原則」が必要だ 日本取引所自主規制法人・佐藤理事長に聞く
――独立社外役員の役割を強調しています。
企業の現場で何か小さな不祥事が見つかった、あるいは、その疑いがあることがわかったというときに、使命感のある経営者が主導して、早期に事実関係を確認し、原因をしっかり分析し、それに即した再発防止策を講じてもらう。これはとても大事なことだ。不祥事が重大で深刻なものにつながることを予め防ぐというオペレーションができるというのは理想的だ。まさに自浄作用が早い段階で発揮され、その結果として重大な問題につながらずに済んだというパターンだ。
他方、経営陣そのものが関与をしてしまっている不祥事も多い。そういう場合、経営陣の信頼性は損なわれており、その経営陣が率先するということは期待しにくいし、かつ、社会的な信用を得られない可能性もある。
そういう場合を想定して、2番目の柱として独立社外役員の役割を挙げた。社外取締役、社外監査役のうち、独立性の基準を満たしている方々がまずは率先して、積極的にリーダーシップを発揮してもらうことがひじょうに大事だ。
社長自身が委員を選んだ第三者委員会ではダメ
プリンシプルにも記したように、企業価値の毀損度合いが大きい場合や事柄が錯綜していて事案自体がひじょうに複雑である場合、さらには社会的にきわめて大きな影響がある場合などでは、調査に十分な客観性をもたせる必要がある。
その意味では、第三者委員会の設置が有力な選択肢になるわけであり、しかも、十分に独立性、中立性、能力を備えているメンバーで第三者委員会を構成する必要かあるということを改めて記している。その際にも独立社外役員がリーダーシップを発揮し、メンバーの選任をリードしてほしい。独立社外役員と第三者委員会はかなり結びついている。
第2の柱では、いわゆる形だけの第三者委員会を整えて調査したと装うようなことはやめよというメッセージも盛り込んだ。それでは、世の中にかえって誤解を流布することになるからだ。典型的には、社長自身が関与している不祥事について、社長自身が中心となって委員を選んだ第三者委員会が社長のために書いたような報告書を「第三者委員会報告」と銘打って世の中に打ち出すことへの警告と受け止めてほしい。
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