上場企業には「不祥事対応の原則」が必要だ 日本取引所自主規制法人・佐藤理事長に聞く

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佐藤隆文(さとう たかふみ)/ 1950年生まれ。1973年4月大蔵省(現財務省)入省、2001年7月金融庁総務企画局審議官、2002年7月同検査局長、2004年7月同監督局長、2007年7月金融庁長官 、2010年4月一橋大学大学院商学研究科教授、2013年6月より現職

――どういう位置づけですか。

プリンシプルはルールではないので直接的な強制力はないし、ルール違反を犯したときに直接、サンクションが与えられるものではない。

それでも、こういう大きな価値観が関係者の間で共通に意識される、つまり、共有されることによって、資本市場全体のパフォーマンスが向上するということは十分に期待できる。

スチュワードシップコードのように機関投資家ごとにそれを採用するかどうかを表明してもらうようなものでもない。これはすべての上場企業に適用があるという意味だ。上場企業であれば、不祥事が起きてしまった際、必ず、このプリンシプルを参照してくれると思っている。

――どれほど巨大な上場企業でも不祥事を起こすリスクがあるという前提に立つ。これは新たな視点ですね。

無謬性神話というようなものがあったのかもしれない。たとえば、有名な企業、優良な企業には不祥事は起きない。あるいは、起きてはならないという思いが強すぎるがゆえに、不祥事を隠すという行動につながるという面も否定できない。そういう日本の上場企業の世界に、不祥事の対応指針を投げかけることによって、無謬性神話を打ち壊すという効果は期待されてもいい。

原因究明はどこまで必要か

――形式主義に陥ることに警告を発しています。

1番目の柱では、不祥事の原因究明は表面的なものにとどめないでほしいと記した。たとえば、その役割の人が十分に牽制しなかったというような表面的な部分だけをとらえて原因究明ができた、とはしない。

それでは、なぜ、その人は牽制球を投げられなかったのか、あるいは答えが返ってこなかったときに、なぜ、厳しく追求できなかったのか、を追及する。その裏側には、企業全体に蔓延している独特な風習があり、独裁的な経営トップがいたなどという根本的なレベルまで究明することを求めている。そこまで掘り下げて原因究明してこそ、再発防止策も有効なものになる。

今回のプリンシプルは不祥事が起きてしまった際の的確で迅速な対応を促すものであり、4番目の柱では、迅速、的確な情報開示で透明性を高めることを盛り込んだ。経営者の皆さんに強くこれを意識して頂きたい。

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