つまり、では金融緩和とは何をしているのかと言えば、中央銀行が市中銀行に対して資金を融通しているだけであります。われわれのポストにおカネを放り込んでくれるわけではありません。ですからおカネはあくまでも市中銀行に留まり、そこから先は各銀行の判断によるものにしかなりえない。日銀はそれを大量に行えば、圧力に耐えかねて銀行は融資に動かざるをえないとしていますが、本当にそういう行動を銀行がとるのか、頭取に聞いてみればいい。
どうでしょう。いくら資金が潤沢にあるからといって、融資基準を下げておカネを貸すわけがありません。現実の資金需要がない限り、急に融資を受けて投資をするという人もいない。
供給サイドですべて決められるという古い考え
その上に消費税増税で最終需要は壊滅的に落ち込んでいます。個人消費支出などの統計を見ても、買いたくても何も買うものが並んでいなかったあの2011年3月の支出額をまだ下回っているという状況が何を意味しているのか。その中で、いったいどこの経営者がカネを借りてまで設備投資をするというのでしょうか。
この間違いの大元は、供給サイドだけですべてが決められる――という、実に古い経済学を信奉している現政権の姿勢にあると言えます。高度成長期には需要は常に存在するものでしたから、作れば作るほどものが売れました。設備投資したもの勝ち、ですから今のような金融緩和をすればわれ先におカネを借りて設備投資をした可能性は非常に高い。
しかし、今はその最終需要が極めて成熟し、コマーシャルを打てばものが売れるような単純な状況ではありません。それは読者の皆さんも、ご自身のことを考えればよくおわかりでしょう。どんなに安かろうがいらないものはいらない、という話ですね。仮にプラズマテレビが5000円で買えるからと言って、テレビをもう一台買おう、という人が今の世の中にどれだけいるのでしょう。
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