安くてもいらないものはいらない。ですからいくら物やおカネを供給したところで、最終需要が活性化するなんて時代ではない。にもかわらず、金融緩和を推し進めれば景気が回復するなんて言うのは、お腹を壊している患者に風邪薬を与えているのに等しい。少なくとも金融危機と無縁だった日本において、まったく効果の期待できない政策と言うしかありません。
もし有効な政策があるとすれば、ある一定の預貸率(資金量に対してどれだけのおカネを融資しているかという比率)を達成しなければ日銀が銀行に対してペナルティーを科す、というような強硬策だと思います。その結果、発生した不良債権に誰が責任を持つのかという問題が発生し、下手をすると銀行の株主から日銀が訴訟をされることになるでしょうから、これは事実上不可能な政策です。ということで、金融緩和はいくらやっても実体経済に対してポジティブな影響を与えることはありえないのです。
物価目標2%がまかり通る摩訶不思議
経済学では経済成長の結果、賃金などが上がり、企業がその分を商品代に上乗せするので物価上昇が起こる、としています。しかし今はまったく逆で、この物価水準を切り上げれば勝手に景気がよくなるというわけです。物価水準さえあげれば賃金は自動的に上がるのだと――。
これも皆さんの実感からしたら、現実はほど遠いのではないでしょうか。物価が上がる――、黒田総裁は何が何でも年率2%まで上げると宣言しています。その中で、皆さんやご家族はいったいどういう消費行動に移るでしょうか?
そもそもこのロジックは、物価が上がる→来年買うともっと高くなってしまう→今のうちに買っておこうという心理が働く→消費に走る、というトンデモナイ経済理論に基づいています。
来年物価が上がることが仮に決定しているとして、その分を今のうちに消費しようと思いますか?? むしろ来年の給与が上がる保証はまったくなく、物価が来年上がるなら、その分を節約して備えようと思われるのでは。今の消費者の行動はそうなっています。給料が右肩上がりで終身雇用が保障された1980年代までとは違い、来年の給与はおろか、自分の今の仕事でさえあるかどうかわからん、というのが今の世の中です。
その中で日銀総裁が何が何でも物価を上げるぞと宣言されれば、そうか、物価が上がるのであればそれに備えて節約しようという行動をとるのが自然ではありませんか? そして今やまさにそうなっています。GDPの60%を個人消費が占めるのですからこれはまさに「逆噴射」。
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