犬猫の「しあわせなお買い物」で笑うのは誰か 保護歴4半世紀の杉本彩氏に内幕を聞く

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――ペットフード協会の2015年統計による犬の生涯飼育平均コストは122万円(平均余命14.5歳)、猫は67万円(同15.4歳)です。飼い主へのアンケートに基づく数字で、医療費なども入っているというのですが。

前からその数字に違和感がありました。実際の飼育経験からすると最低限の話じゃないかな、と。私の猫の保護・飼育歴は24年、犬は6年。猫に関する経験は長く、ほぼあらゆる問題にぶち当たったと言えるほどです。犬はまだ勉強中ですが。

――一方、関西大学の宮本勝浩名誉教授が2月にまとめた「ネコノミクスの経済効果」資料によると、昨年1年間の猫の飼育費は平均11万円強でした。この額に国内飼育数987万匹を掛けた1.1兆円に、業界関係者の消費増による波及効果などを加えた経済効果総額が2.3兆円だとしています。

ペット業界が飼育コストで安めの数字を出してくるのは、生体販売をなるだけ増やしたいからかもしれませんね。結局そこの風下で「横着な商売」をしているわけですから。あと、ペット業界が環境大臣に、規制をこれ以上厳しくしないよう要請しているとも聞いています。他のいろんな業界は、規制や法律が厳しくなったら受け入れて努力するというのに。。

「経済効果」求めるのはモノ扱いの証

それでも命を買いますか? ペットビジネスの闇を支えるのは誰だ(上の画像をリンクするとアマゾンのサイトにジャンプします)

あと、動物に経済効果なんて、本当は求めてはいけないでしょう。商品にしていること自体おかしいですから。日本の犬や猫の国内飼育数の合計は子どもの数よりも多く、家族同然に暮らしている人も増えています。日本の法律でペットはあくまでも器物扱いのため、簡単に「首をひねられる」こともありますが、命としての尊厳を考えるべきだと思います。

――著書を拝読して、根拠のない批判は控えている印象を受けます。

そうなんですよ。私も若い頃は結構イケイケな部分やけんか早いところがありました。でも、そこからは何も生まれないと理解しました。何かを本当に変えたかったら、説得力のある穏やかなアプローチが絶対に必要。戦争のようになれば逆に、あまり望まない方向に行くでしょう。

 ――しかし、商業主義は本当に恐ろしいものです。対抗策は?

業界の資金力を持って広告宣伝されたら、こちらはまず太刀打ちできません。対抗するには、とにかくあきらめないで粘り強く、人のモラルを信じて(啓発活動などを)やり続けることに尽きるんですよ。この活動は自分の人生の使命と思って、覚悟して取り組んでいくつもりです。

(撮影:尾形文繁)

駅 義則 東洋経済オンライン編集部

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えき よしのり / Yoshinori Eki

1965年、山口県生まれ。1988年に時事通信社に入社し、金融や電機・通信などの業界取材を担当した。2006年、米通信社ブルームバーグ・ニュースに移ってIT関連の記者・エディターなどを務めた後、2015年9月に東洋経済オンラインのエディターに。現在の趣味は飼い主のない猫の里親探し

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