犬猫の「しあわせなお買い物」で笑うのは誰か

保護歴4半世紀の杉本彩氏に内幕を聞く

――確かに、小さな子犬や子猫が定期的な競り市(オークション)で適切なケアもせず大量調達されてペットショップに並ぶ実情や、かわいい盛りが過ぎて売れ残ると遺棄・殺害したり、劣悪な環境下で子供を産ませ続けるケースがあることは、ほとんど知られていません。

このほど発売の新刊では、2014年度に国内流通した犬猫は約75万匹で、うち2.3万匹が流通過程で死亡したという、朝日新聞と「AERA」の報道を紹介しました。しかし、あの数字はあくまで業者の自己申告。こうした数字に含まれない例として、ブリーダーから直接、こんな話を聞きました。

売り物にならない子犬が産まれたらすぐに首をひねって処分するのですが、その前に愛護団体に電話して「今からひねるけど、要る?」「鳴門海峡に今から捨てに行くけど、持ってく?」などと言って引き取らせるそうです。まさに確信犯ですが、連絡するだけまだ良いのかも。

行政による殺処分は、ボランティアが引き取って里親を探すのが増えたことを主因に減り続け、2014年度に犬猫計で10万1338匹になりました。でも、これとは別の「民間による殺処分」はこれ以上の規模ではないでしょうか。無計画な大量生産に大量のロスが伴うのは、市場の常です。

――きちんとした店を見分けるコツはありませんかね。「この子の母親の写真を見せて」と店員に言ってみて、反応を見るとか。あるいは動物愛護法で説明が義務付けられている18項目を知っているか聞くとか。

日本ではあまりトレーサビリティーを気にせず、賞味期限と消費期限の違いすら知らない人が多かったりします。食の問題でさえこうなのだから、かわいい犬や猫を見て舞い上がっている状況で、そこまで冷静になれる人はそもそも、ペットショップで買わないはずです。

だから、ペット購入に高い税金を課したり、飼い主になる場合は特定の講習を義務付けたりすべきでしょう。保護団体への課税は免除できますし。

ブームの負の側面、絶対に出てくる

杉本彩(すぎもと・あや)/京都市生まれ。女優・作家・ダンサーのほか、コスメブランドやワインレストランのプロデューサーとしての顔も持つ。20代から始めた動物愛護活動の経験を活かし、動物虐待を取り締まるアニマルポリスの創設や動物福祉の体制整備を行政に働き掛けている

――保護活動を長年続けてきた中で、何か変化を感じていますか。 

良くなった点は行政や民間の施設から里親に引き取られる犬や猫が増えたことくらい。逆に悪くなったのは、大手参入で生体販売ビジネスが巨大化した点。ペットショップがショッピングセンターの客寄せをしている面もあるようですし、「抱っこさせたら勝ち」で衝動買いさせ無責任な飼い主を増やしています。

――今回の新刊を書かれたのは、状況が切迫している危機感からだとの見方は当たっていますか。

当たってます。「猫ブーム」の負の側面がこれから絶対出てくると懸念しています。「飼育が楽だから」というペット業界の売り込みを鵜呑みにして、猫と暮らし始める人が急増するかもしれませんしね。本当は決して、飼うのは楽じゃないのですが。

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