世界の空港を訪れて悟る、成田の「出遅れ感」 空港運営が上手な都市こそ、今後繁栄する

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これは、街から離れている空港を整備するという視点ではなく、その空港を中心とした一帯に街を作るというアイデアに切り替えることによって、いままでにない新市街を作ろうとする計画を指します。

確かにこのようなアイデアは、僕のように移動を続ける人種にとって魅力的な提案で、空港を中心とした街ができれば(安全に配慮した設計で)、移動が多い人たちはその街を起点に生活を考えれば良いことになります。

一昨年、クアラルンプールにオープンしたLCC用のターミナル2は、鮮魚を買えるスーパーからトイザらス、オーガニックレストランまで備え、いわゆる「駅ビル」のような感じを受けました。

いままで、いや、いまでもほとんどの空港は、お土産や旅行用品を扱うショップが大半ですが、視点を駅ナカのように切り替え、増え続ける空港を行き交う人々の生活空間に大きく変えていく必要があると僕は考えています。

最も乗り継ぎに戸惑ったのは成田空港

さて今週、トリニダード・トバゴ→マイアミ→ロサンゼルス→東京→香港→深セン→東莞→深セン→香港→シンガポールと移動したなかで、もっとも乗り継ぎに戸惑ったのは、東京の成田空港でした。

2時間近い接続時間があるのにギリギリで、久しぶりに空港内を走りました。なんでも、夜間(といっても19時台)は、接続バスが運行していないので、一度入国する必要があるとのこと。

手荷物だけで、また自動入国ゲート機を使いましたので間に合いましたが、おそらく日本人以外で荷物を預けていれば、2時間の接続でも成田のターミナル間移動は間に合わないように思います。僕が知る限り、この時間で接続できない空港は、フィリピンのマニラと東京の成田だけです。

空港運営が上手な都市は繁栄することは、21世紀の基本的な教えだと思いますが、果たして「新東京国際空港」と名がつく成田は、どこに向かうのでしょうか?

できたばかりのLCC専用の成田空港ターミナル3と、二年前にできたLCC専用のクアラルンプール空港ターミナル2を見比べると、時代に対する「本気度」の違いを感じざるをえない今週です。

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高城 剛
たかしろ つよし

1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

 

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