プロ経営者は日本郵政をどう舵取りするのか 西室社長の後任にゆうちょ銀の長門氏が昇格

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日本郵政の次期社長に内定した長門正貢・ゆうちょ銀行社長。信条は「Cool Head, but Warm Heart」(冷静な頭脳と温かい心)(撮影:尾形文繁)

国際金融の”プロ経営者”に時価総額6.8兆円の巨大企業の舵取りはできるのか――。

日本郵政は、3月16日に開いた指名委員会や臨時取締役会で、入院中の西室泰三社長(80歳)に代わって、ゆうちょ銀行社長の長門正貢氏(67歳)が4月1日付でトップに就任することを決めた。

同社は昨年11月4日に、子会社のゆうちょ銀行とかんぽ生命とあわせ、親子3社の同時上場を果たしたばかり。3月16日時点の時価総額は6兆8580億円と、全上場企業中8位の巨大企業だ。

西室氏は入院中で復帰のメド立たず

後継者問題が表面化したのは2月下旬のこと。社長の西室氏は東芝や東京証券取引所のトップ、郵政民営化委員会の委員長を歴任後、2013年から日本郵政のトップを務めていたが2月8日から検査入院することになり、鈴木康雄上級副社長が職務を代行していることにさかのぼる。

この9月で81歳になる西室氏は、「来年(2017年)の株主総会まではトップを勤める」という意向だった。ただ、高齢などを理由に2015年後半あたりから後継問題がくすぶり始めていた。

結局、西室氏は3月になっても復帰のメドが立たず「3月3日付で、3月末辞任の申し出があった」(鈴木上級副社長)ことで、後継者選びが喫緊の課題となった。

日本郵政株式の89%を保有する政府としては、外部からの招聘も検討していた模様だが、6月に初めて実施される定時株主総会をにらみ、最終的に子会社で、グループの利益の大半を稼ぎ出す、ゆうちょ銀行からの内部昇格に落ち着いたようだ。

次期社長の長門氏は、ひとことでいえば国際畑を歩んできた金融の専門家で、「とにかく明るいキャラ」は、つとに有名だ。東京都出身で学習院中・高等科を経た後一橋大学に入学。卒業後は旧日本興業銀行(現みずほ銀行)、富士重工業副社長、シティバンク銀行の会長を歴任した。

2015年5月に西室氏の招聘で、ゆうちょ銀行のトップや日本郵政の取締役に就いた。「ゴリゴリの金融専門家」ではなく、興銀時代には米ボストンの名門・フレッチャー法律外交大学院に留学、国際関係論なども学んでいる。富士重工工業では「スバル」の海外営業を統括するなど、メーカーや営業畑の経験もある。

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