安保理の決議は2006年に北朝鮮が初めて核実験を行って以来すでに数本成立しているが、その内容は、一方で、北朝鮮に核兵器とミサイルの実験を禁止し、かつ、その放棄を求めている。そして他方で、各国が北朝鮮に対し制裁措置をとることを求めている。前者は北朝鮮に対する要求であり、後者は各国に求める要求だ。ところが北朝鮮は要求に従わないので、実質的には前者は決議の「目標」であり、後者はそれを達成するための「手段」となっている。
今回の決議で後者の「手段」は大幅に強化されたが、それによって核兵器とミサイルを放棄させるという「目標」を達成できるわけではないのだ。
中国は、このことを強く意識しており、制裁決議を実行することと同時に、北朝鮮との平和協定の締結についての交渉が必要だと主張している。制裁決議だけでは北朝鮮に核とミサイルを放棄させることはできないという意味だ。
中国がそう主張する理由は、北朝鮮が核とミサイルを手放すことはないとみなしているからだ。つまり、どれほどきつく締めあげても、北朝鮮が国家の存続にかかわることとみなして、あるいは思い込んで抵抗している限り、放棄させられない、と中国は見ている。正面から「制裁だけでは目標を達成できない」と言わないのは、中国が決議の効力を軽視しているとか、中国は忠実に実行する気持ちがないと批判する口実を与えたくないためだろう。
一般論として、中国の対外主張はプロパガンダが混じっていることが多いが、今回のこの考えは大筋において間違っていない。
米国の考え方は?
一方、米国は手段であるところの制裁が手ぬるいとみている。北朝鮮に対し最大の影響力を持つ中国に対し、制裁決議の実行が十分でないと不満を漏らし、再三、北朝鮮への圧力を強化するよう求めてきた。今般成立した新決議についても、中国が忠実に実行することが肝要との考えだ。
要するに、米国は、中国が本気になって制裁決議を実行すれば、核とミサイルの実験のみならず、放棄も実現できるとの立場である。
この米国の立場には裏もある。そもそも、制裁決議だけで核とミサイルの放棄を実現できると本気で考えているとすればあまりにもナイーブであり、経験豊かな米国政府の外交スタッフが本心からそのような立場を取っているはずはない。
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