「チームでアプリを作る」と起こる良いこと サンフランシスコ在住の日本人が開発

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Phami.lyは、完成まで5年の歳月がかかっている。その理由は、彼らが「チームによるサイドプロジェクト」という形を守ったからだ。

「実際にプロジェクトを走らせてみて、改めて感じたことは、フルタイムでの仕事は非常に時間に恵まれているのだ、という点でした。基本的には、終業してからの夜の時間と週末しか、プロジェクトにかける時間はありません。チームで集まるとしても、それぞれのスケジュールもあります。時間的制約は、最も厳しかった点でした」(川島氏)

フルタイムでの仕事が月間20日だとすると、残りは10日。その中でプロジェクトに費やせるのはせいぜい4〜5日程度しかない。また連続して使える日数もないため、効率も非常に悪かった。

その一方で、無限に時間が使えるメリットもあったという。業務では締め切りが決まっており、それまでに仕上げることが求められる。しかしサイドプロジェクトでは、その制限がない。そこで、丹羽氏は、不用な自動化やライブラリを自作するなど「趣味に走った」という。

「私の場合、普段の仕事では、サーバサイドの設定などは絶対にやりません。データベース担当のエンジニアもいるため、通常アプリのエンジニアには触れられない領域でした。大きな企業では責任の分岐点がはっきりしているため、たとえ改善点がわかっていても、指示以外のことはできません。また、できあいのライブラリを使うなど、パフォーマンスが上がるやり方しか採れません。こうした普段触れない部分まできっちりと経験したかった、これが趣味たるゆえんです」(丹羽氏)

自分の職へのフィードバックも

デザインとディレクションを担当した川島氏も、米国で働く上で、プロフェッショナルが求められると、逆に自分の専門のことしかやらなくなる点が、自分の経験の枠や成長を抑えていると感じていたという。

「プロジェクト管理や、エンジニアとの議論は、普段の仕事ではやらないことでした。自分の仕事の幅を拡げる目的も達成でき、また自分たちが欲しいものを作る経験もできた」(川島氏)

川島氏は、現在のプロジェクトになるまでの間に、資金調達のためのピッチを経験したり、その方針を撤回したりと、紆余曲折があったことも紹介した。また、5年間の間に、テクノロジーや時代背景の変化も感じたという。

「たとえば、iPadは2012年に、より高精細なRetinaディスプレイが搭載されました。これに伴い、アプリやシステムの設計を見直さなければならなくなり、時間を取られました。また、今のサンフランシスコの雰囲気であれば、アイディアを持って1000万円程度の資金調達をして、人を雇って一気に作り上げることを選択していたかもしれません」(川島氏)

それでも、サイドプロジェクトを貫いた理由は、本業であるテクノロジートップ企業での「チャレンジ」が続いているからだ。アプリは育てるフェイズに入る。彼らは自分たちで作ったチームから、今後も多くを得ることになるだろう。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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