グーグルが「僻地」まで技術を極め続ける理由 11の最新ニュースから見えてくる"本気度"

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技術的な面でいえば、『人工知能、囲碁でプロ棋士破る グーグルが開発』(日本経済新聞)というニュースも見逃せない。将棋やチェスに比べて囲碁は難易度が高く、「人工知能が人間に勝つにはあと10年かかる」と言われていた。しかし、すでにハンディなしで互角に戦えるまでになっているそうだ。

この人工知能は、囲碁のみならず、さまざまな分野での活用が期待される技術。今や、科学の最先端を走るのは政府やアカデミックではない。“民間企業”のグーグルが科学を引っ張っていると言っても過言ではない。

主に検索サービスを展開するグーグルだが、画像認識技術も向上させている。この技術により、例えば画像のなかに記されたテキストをかなりの高精度で検索できるようになっている。この高い画像認証・分類の技術を一般に公開するそうだ。『Googleの画像認識/分類API、Cloud Vision APIが誰でも使える公開ベータへ』(TechCrunch Japan)

「大企業病」にはかかっていない?

検索サービスを提供するグーグルのビジネスを考えると、この技術を一般に公開することは「敵に塩を送る」ようなもの。にもかかわらず、公開したのには、「技術を公開することでインターネット全体が活性化するならば」というスタンスがあるからだろう。この器の大きさは、やっぱりグーグルだ。

同じスタンスは『グーグル、低所得世帯に高速インターネットサービスを無料提供へ』(CNET Japan)『グーグル、高速ネット接続サービス拡大 全米11都市目』(日本経済新聞)のニュースにも現れている。

もともとグーグルは検索やグーグルマップなどのサービスを提供する企業であり、インフラとしてのネット接続を提供する必要はない。しかし、インターネットを利用する人が増えれば世の中が豊かになると考え、提供。そういったスタンスを取る姿勢はさすがであり、そして、ネット利用者が増えると自ずと自社が儲かる「風が吹けば桶屋が儲かる」仕組みを築き上げたのもすばらしい。

このように大企業と成長すると問題となってくるのが「大企業病」だ。この病にかかると動きが鈍くなってしまいがちではあるが、グーグルは世界でもトップクラスの規模であるにもかかわらず、判断が早い。

Webページの作成においてFLASHの存在感が年々薄れ、代わりにHTML5が普及している今、『GoogleがFlashを使った広告を全面禁止へ、HTML5ベースに』(Gigazine)という決断を行った。この判断の柔軟さや迅速さこそが、企業として成長するための大きな原動力になっているだろう。

※ 後半の「グーグルの弱点」「グーグルの誤算」は週刊『夏野総研』ブロマガ(有料)でご覧ください

夏野 剛 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授

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なつの・たけし

早稲田大学政治経済学部卒業、東京ガス入社。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒(経営学修士)。NTTドコモでiモードの立ち上げに参画。執行役員マルチメディアサービス部長を務め、08年に退社。現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、DLE、GREEの取締役を兼任。経産省所轄の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー現任。ダボス会議で知られるWorld Economic Forum の“Global Agenda Council”メンバーでもある。


 

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