J1名古屋グランパスの長すぎる低迷、Jでは「トヨタ流」の効力なし?
チーム力停滞の悪循環 トヨタ“子会社”の功罪
すでに15年以上も前の話だが、驚くことに、グランパスがそれなりに市民権を得た現在でも、心理的な距離感はそう縮まってはいない。
競技場の優先順位はあくまで陸上競技にあり、グランパスのスケジュールは二の次だ。メインスタンドの一部を除いて、観客席の頭上に屋根はなく、天候によっては厳しい試合観戦となるが、それが改善される気配はまだない。
現実に、観客数はリーグ平均を下回って久しい。昨年のホームゲーム平均入場者数は1万7000人弱。瑞穂陸上競技場の収容人数2万人はなかなか埋まらない。クラブのチーム力や人気は目に見えて上がらず、当然、行政など周辺の評価も上がらない。それがまたチーム力を停滞させるという悪循環にはまっていた。
実際、クラブは迷走を続けた。名将アーセン・ベンゲル氏が英プレミアリーグへ去って以降、「優勝請負人」と名が付く人物を連れてきては、1年ほどで解任するということを繰り返してきた。「自称代理人のような人たちに食い物にされたのかもしれない。選手のスカウトも、華のある選手かどうかで決めていた気がする」とあるサッカー関係者は話す。
ベンゲル時代には頂点まであと一歩のところに迫った。それで「ファンやスポンサーの心理はもう優勝しかない、と思い込み、短期的な対応に終始してしまった」とクラブ幹部。猫の目のように変わる陣容は戦力アップにつながらず、ファンもついていけなくなった。
サッカーに関する確固たるビジョンを持ち合わせていなかったことは、クラブ幹部も認めている。元スタッフは「サッカークラブというよりは、やはりトヨタの子会社だった」とつぶやく。プロのクラブになりきれないことが、その背後にある。
これまで、トヨタグループからの出向者がいわば本社との往復切符を手にしながら、経営に携わってきた。
「一度もJ2に降格していないのは、トヨタ流の経営手法が成功した部分」(かつてグランパスでテクニカルディレクターを務めた上田滋夢氏)と認める声もある。一方、サッカー界では、「10万円以上の投資はトヨタ本社の了解が必要らしい」というようなうわさ話が流れてきた。
有力選手の名が移籍市場に浮上した場合、欲しい人材であるならクラブ側は即行動が鉄則だ。数千万、場合によっては数億円必要な投資になるが、グランパスはそうした迅速な決断を下すことができなかったようだ。親会社の決裁を待っているうちに、選手が別のチームにいってしまうことがあったといわれる。
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