財布の中身の奪い合いから、個人の時間を奪い合う時代--林野宏・経済同友会消費問題委員会委員長(クレディセゾン社長)
--ファンドが小売業態の株主に登場してきていますが、この流れをどう見ますか。
ラグジュアリーの持つよさとか、長い時間をかけて蓄積してきた価値を、ファンドが破壊している。経営効率だけを最優先する組織体がブランドを買い占めれば、やがてブランドは崩壊していくでしょうね。ラグジュアリーには不可欠な希少価値を否定して、売れるとでも思っているのですかね。
--巨額な財政出動による景気対策の評価はいかがですか。
リーマンショック直後に日本が先進国の中でいちばん軽症だって言われたんですよね。それが、いちばん重症になっています。なぜそうなったのか? 自動車メーカーや電機メーカーに象徴されるような、為替と輸出、要するに米国およびそれ以外の海外マーケットのシュリンクと言っているのも正しいんですけどね。それよりも、やっぱり小泉さんが退陣した後にできた、改正建築基準法とか貸金業法とか、あれはみんな大衆保護という大義名分で可決したが、弊害を数多く積み残しました。
明らかな規制強化ですよ。規制緩和が今の社会を生み出したというのに、規制を強化して公務員たちの権限を拡大したのか、あるいはそこに新たに天下りできるような組織を作ったのかわかりませんけれどね。規制強化による景気後退の影響は、かなり大きい。
国民が安心して暮らしていける、ということは経済成長を促して富を創造し、それを国民に配分するっていうことです。雇用の拡大なり、1人当たりの賃金の上昇なりっていうのは、それぞれの企業が利益を上げないかぎり不可能なのですよ。
景気対策ですが、定額給付金をまくのに、いくらかかっているか、ですよね。社会的に富を再配分するコストを、最小限にすることが重要。ところが麻生首相のやり方は、ものすごいハイコストの配分でした。だから、ぜんぜんダメですよ。
日本は米国のように国家戦略を持つべき。友愛とか、美しい国とか言っている場合ではないですよ。
(聞き手:鈴木雅幸 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)
りんの・ひろし
1942年生まれ。65年埼玉大学文理学部卒業、西武百貨店入社。82年クレディセゾン入社、83年取締役、95年専務、2000年から社長。05年4月から経済同友会幹事。
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