NEC、「モバイル解散」の意外なプラス効果 税金支払いの面で大きなメリット

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今回、NECが売上高を2000億円下方修正した主な理由は、パブリック部門での航空宇宙・防衛領域の大型案件が翌期にずれたことや、期待していた海外水処理案件の受注を取り損なったことである。それらの影響が計650億円だった。

ほかには、テレコムキャリア部門で、国内通信事業者の設備投資抑制の影響が出たことや、SDNなど新規事業が思ったよりも伸びなかったことで、計700億円。小型・大型蓄電システムや新電力向けでの拡販が430億円の未達となる。

ところが、NECは最終利益予想を期初計画の650億円で据え置いた。なぜか。それは携帯子会社・NECモバイルコミュニケーションズを清算する影響が大きい。同社は昨年度末時点で1015億円の債務超過だ。

3月にNECモバイルを清算してNEC本体に吸収することに伴い、NECは同社向けの債権1012億円を放棄する。携帯子会社を清算し本体に吸収するのは、携帯部門が小さくなってきたので、本体に吸収したほうが効率的だからだ。また、全額を引き当て済みなので、この債権放棄による新たな損失は発生しない。

税金支払いの面で大きなメリット

しかし、税金を支払う上では大きな影響が出る。今まで税法上、損金算入されなかった引き当て分が、今回の清算・債権放棄の決定で、税法上の損金として認められる結果、税金の支払いが少なくて済む。この影響で、今回の大幅な営業利益の下方修正にも係わらず、最終利益は期初計画のままの650億円を確保できるというわけだ。

ただ、来期はこの特殊事情がなくなる。来期は今期からの期ずれ分が乗ることで営業増益になったとしても、税の特殊事情がなくなり、最終利益は減益となる可能性が高い。

今期は遠藤信博社長の最終年度、来期は新野隆新社長の初年度に当たる。遠藤時代は、1102億円の最終赤字を計上した2012年3月期から毎期最終増益を続け、最終年度も増益で終わることになるだろう。

新野時代は最終減益で始まる見通しだが、その後はどうなるのか。4~5月に発表予定の新しい中期計画は新野社長が陣頭指揮を執る渾身の作。その中身と、来期の期初計画に注目が集まりそうだ。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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