満員電車も遅延も許せない! 通勤問題に特効薬はあるか《鉄道進化論》

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 鉄道各社は、高度成長期のような大規模な輸送力増強には現在では及び腰。そこで森地所長が唱えている案が、「短い区間だけの複々線化など少々の線増、それも2車線から4車線といった倍増だけでなく3線化の検討、追い越し施設の整備や、(障害・遅延の広域化を防ぐ)折り返し施設の設置、またプラットホームを2面化するなどの一部ターミナル駅の改良」。つまり、投資効果の観点から賢くおカネを使うプロジェクトを遂行せよということだ。

混雑・遅延の解消技術へ 公的資金を積極活用せよ

この文脈では、たとえば東京メトロは「有楽町線の途中の豊洲駅を改良し、折り返し運転を始める計画」(是澤正人・鉄道本部運転部運転課長)だ。

技術面でも新たな動きがある。JR東日本では、列車が無線を使って自分の位置を知り、前の列車との間合いを考えながら走る新しい信号システム(ATACS)を開発した。

「閉塞区間」と呼ばれる一つの区間に1列車だけを進入させる100年来の仕組みから、ATACSでは閉塞区間の設定がなくなるため、「設備数量が減り、またハードウエアもより信頼性の高いものを用いることで、故障が起きにくくなる分、輸送障害や遅延の減少につながる」(JR東日本)という変革を遂げる。11年春を目標に仙石線に導入するが、将来は首都圏への導入が視野に入る。

鉄道コンサルタント会社、ライトレールの阿部等社長は「閉塞方式によらないで安全に列車間隔を縮める信号技術は輸送力増強に有効」と、無線を用いる独自方式を主張する。将来は列車運転方式の変更などと相まって、混雑解消に威力を発揮する可能性もある。

ここで注目されるのが、05年に施行された「都市鉄道等利便増進法」の存在。利便増進法の下では、事業認定がされると、経費の3分の2は国と地方公共団体が補助を行うことができる。

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