満員電車も遅延も許せない! 通勤問題に特効薬はあるか《鉄道進化論》

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 ラッシュ時の列車増発という対策が限界に近づく中で、鉄道各社に打開策はあるのだろうか。

最混雑区の緩和目指した 新線・複々線計画が進捗

JR東日本は13年度をメドに宇都宮、高崎、常磐線の東京駅乗り入れを計画している(仮称・東北縦貫線)。これまで東京-上野間の在来線は山手・京浜東北線のみだったが、神田駅付近の東北新幹線高架橋を重層化して、乗り入れを可能にする。山手・京浜東北線上野-御徒町間の混雑率は首都圏でも最も高いが、新たな線路が加わることで、相当の混雑緩和が見込めるもようだ。

同じ路線の上り、下り車線を増やす「複々線化」に取り組んできたのが小田急電鉄だ。小田急が最初に複々線化計画を決定したのは1964年と45年も昔のこと。総投資額3000億円(2650億円は投資済み)の大プロジェクトであり、残された区間の世田谷代田と東北沢間が13年度に完成する予定だ。小田急では「最混雑区間の混雑率は現在の192%から、160%台までの低下を見込んでいる」と言う。

東急電鉄では、田園都市線の混雑を緩和する狙いで、二子玉川で接続する大井町線のバイパス機能を強化する改良工事を16年前から進めてきた。08年3月には大井町線で急行運転を開始し、同時に1編成当たりの車両を増やす輸送力強化を実施した。東急によると「6ドアや座席格納車両の導入なども相まって、田園都市線の混雑率は07年度の198%から、08年度は193%まで低下した」。この7月には大井町線を溝の口まで延伸し、田園都市線の二子玉川-溝の口間を複々線化する。大井町線の魅力を一段向上し、利用客にも訴えていく方針だ。

こうした新線開発や複々線化といった大規模な輸送力増強工事は、さすがに混雑緩和策として効果が高い。その反面、用地買収なども含めて巨額の資金を投じる必要があるし、計画から完成まで長い年月がかかる。そのため、鉄道全社を見回しても、前述の3プロジェクトが完了した以降には、混雑・遅延解消に大きな効果が見込めるような目ぼしい事業計画は乏しくなる。万事休すか。

「東京の鉄道問題の解消は可能と考える」と通勤者にとって明るい未来の可能性を語るのは、国交省の交通政策審議会で鉄道部会長を務めた運輸政策研究所長の森地茂氏だ。

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