新幹線をめぐる全国バトル! 続々開業、勝者は誰だ《鉄道進化論》 今後、次々に開業する整備新幹線に地元は何を期待するか。北海道から鹿児島まで全国ルポ。

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整備新幹線の救世主か?フリーゲージトレイン

6月12日午前2時、熊本・新八代駅のホームに見慣れないブルーの3両編成の車両が滑り込んだ(下写真)。無人の客席には乗客の代わりにさまざまな計器類が所狭しと並べられている。これが全国新幹線網構築の“切り札”となりうるフリーゲージトレイン(FGT)である。

FGTとは、車軸の長さを変えることができる電車のこと。新幹線と在来線ではレール幅が異なるので、新幹線車両を在来線に走らせるためには、山形・秋田新幹線のように在来線のレール幅を広げるか、もう1本付け足すなどの工事が必要となり、多額の費用がかかる。そこで、走行中に車輪の幅を変え(軌間変換)、新幹線と在来線の線路の両方を走れるようにしたのがFGTである。

鉄道建設・運輸施設整備支援機構とJRやメーカーらで構成される技術研究組合が中心となって開発し、現在は実際の営業路線で試験中だ。6月3~12日に実施された試験では、長さ50メートルの軌間変換装置の上を3両編成のFGTが時速約10キロで通過し、車輪の左右間隔を変更した。この間30秒。6両編成なら1分で軌間変換できる計算だ。

すでに在来線の走行試験は終了し、今後は最高時速270キロを目標に新幹線上での高速走行試験が行われる。2010年夏には実用性に向けた評価が行われる予定だ。

実用化された場合に、最初の導入が見込まれるのが、九州新幹線(長崎ルート)の武雄温泉-諫早間。従来の新幹線と比べて建設コストを大幅に抑えることができ、さまざまな在来線ルートに導入が可能だ。

ただし、実際の運用となると問題も多い。たとえば新幹線の最高時速が300キロを超える現代では、最高時速270キロのFGTはスピード不足。新大阪駅や東京への乗り入れにはダイヤ編成上の障害となる。台車が重いため線路の傷みが早いことも、解決すべき課題の一つである。

(週刊東洋経済)

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