新幹線をめぐる全国バトル! 続々開業、勝者は誰だ《鉄道進化論》 今後、次々に開業する整備新幹線に地元は何を期待するか。北海道から鹿児島まで全国ルポ。
【博多】「新幹線で買い物」見込み 流通の一極集中が加速
「博多と同じ土俵に立つだけに、全線開業は両刃の剣になるかもしれない」(鹿児島市)、「観光客・ビジネス客に素通りされる“通過駅”になるのでは」(熊本市)など、博多以外の沿線都市では2011年3月予定の九州新幹線全線開業(鹿児島ルート)へ向けて、それぞれの思惑による緊張が高まる。
一方、当の博多は冷静。肥後銀行系の地域流通経済研究所が昨年11月に全線開業が及ぼす影響について福岡、熊本、鹿児島3県で行った聞き取りでも「影響はない」との回答が、福岡県は群を抜いて多かった。山陽新幹線開業からすでに34年以上、新幹線は見慣れた光景だ。
しかし、そんなクールな福岡市民でも、全線開業を意識せざるをえないものがある。博多駅ビルの建て替え工事である。06年度から全線開業まで丸5年行われる大工事で、完成すれば「旧駅ビルの約6倍の規模になる」(JR九州企画部長・山田眞弘氏)という。すでに、阪急百貨店、東急ハンズ、複合映画館のティ・ジェイなどの入居が決まっている。
6月16日、三越伊勢丹ホールディングスは博多の老舗百貨店、岩田屋の完全子会社化を発表した。九州最大の商業地、天神にある2社の店舗の効率化が目的だが、天神が博多駅から約2キロメートルに近接することも背景にある。新駅ビル登場で駅前と天神との競争が激化するのは必至だからだ。岩田屋の子会社化はこの「11年問題」もにらんだ策といえる。
博多駅前の開発は新幹線を利用して九州全土からの買い物客が集まることを想定している。博多駅は現在1日当たりの乗降客数が約35万人と九州最大だが、新幹線全線開業で利便性はさらに高まる。加えて、08年4月に着工した長崎ルートも「博多始発が想定される」(JR九州新幹線計画部・宮崎正純部長)。全線開業による博多一極集中は、まず流通業から始まっている。