新幹線をめぐる全国バトル! 続々開業、勝者は誰だ《鉄道進化論》 今後、次々に開業する整備新幹線に地元は何を期待するか。北海道から鹿児島まで全国ルポ。
【札幌】「新幹線よりも飛行機」 民主党演説の衝撃度
「これでは、何のための新幹線かわからない」(道商連幹部)。昨年暮れ、予算編成の原案が印刷に回される直前、政府・与党のワーキンググループ(WG)から示された結論に、道内の新幹線誘致関係者は複雑な表情を浮かべた。新規着工区間は、要望していた札幌-新函館(211キロメートル)のうち、札幌-長万部間(124キロメートル)に減り、「フル規格」が前提の整備方式は要検討とされた。
ともあれ、WGの合意を受け、今年度予算に着工調整費9億円が計上され、「全線着工に向けた一里塚」(高向巌・道商連会頭)と歓迎する声も少なくない。が、「部分着工になっても、1兆2000億円は必要」とされる財源にメドが立たない以上、せっかくの着工調整費も執行保留のまま。国交省鉄道局は鉄道運輸機構の特別勘定の取り崩しなどを検討しているもようだが、「制度変更が必要」(同局)として、8月の概算要求までに財源を確保できる見通しはない。
さらに懸念がある。民主党の政権獲得がささやかれる総選挙だ。5月下旬、帯広に遊説に訪れた岡田克也幹事長は演説で、「北海道は新幹線より飛行機」とブチ上げてしまった。
これまで与党への陳情に血眼だった道や経済界からは、「政権交代で、これまでの積み上げはご破算」と、嘆き節が聞こえてくる。そもそも、肝心の道民が「実物の新幹線を見たこともない人ばかりで、市民レベルで誘致活動が盛り上がらない」(経済団体幹部)のも頭痛のタネだ。知事を会長とする新幹線建設促進期成会では、「新幹線体験ツアー」を実施するなど、まずは新幹線そのものの認知度アップに懸命だ。