新幹線をめぐる全国バトル! 続々開業、勝者は誰だ《鉄道進化論》 今後、次々に開業する整備新幹線に地元は何を期待するか。北海道から鹿児島まで全国ルポ。
【北陸】悲喜交々(こもごも)の新幹線延伸 ブランド力では金沢リード
「あと5年しかない」(金沢商工会議所・金丸一彦氏)。2014年長野-富山-金沢間開業に向け北陸新幹線沿線では各地各様の取り組みが進んでいる。
福井駅開業まで当分の間“終着駅”となる金沢。東京-金沢間を現行の3時間43分から81分短縮し、直通2時間22分で結ぶことになる。
「新幹線金沢駅を玄関口に、石川県内全域に開業効果を広める」(石川県企画振興部・稲葉良二氏)。金沢の中心市街地、観光施設の魅力向上を図るため金沢城整備などの取り組みを進める。併せて、JR金沢駅と中心市街地を結ぶ新幹線対応型新バスシステム「まちなかシャトル」を10年度導入予定だ。
一方、富山は新幹線開通で逆に“通過駅”となるのを警戒する。加えて、地元衣料品店では「お客を東京に取られてしまう」というストロー現象への危機感のほうが大きい。
富山市に営業所や支店を置く企業が、北陸新幹線延伸に合わせて富山から金沢に営業所・支店を移転する案も浮上しているという。富山から東京や大宮へ支店機能を集約する関東圏の企業も出てきかねない。
とはいうものの、観光面での経済効果は期待が大きい。現在、関東圏から立山・黒部アルペンルートへ列車で行く場合、長野経由が早い。だが、新幹線開通後は富山駅経由が最短に。また飛騨高山へも現在のメイン経路長野より富山駅から行くほうが到着時間が早くなる。
それを受けて、富山駅から閑散とした中心市街地へ人の流れをつくる取り組みが進む。市内を走る路面電車は09年12月環状化され、ライトレール型LRV(軽量軌道交通)が中心市街を走る。富山駅は新幹線開業に向けて高架化、駅前広場を整備する。
目玉は何といっても、富山市の北側を走る富山ライトレールが鉄道の高架下を貫通し、南側にある富山地方鉄道の市内軌道と接続運転されることだ。分断されている南北がつながり、富山駅前と中心商店街が路面電車で結ばれる。「新幹線開業を関東圏からの集客につなげたい」(富山商工会議所・宮崎公順氏)。
ただ、「県内の人でさえ14年に新幹線金沢駅が開業する予定だと何人が知っているか」(金丸氏)という状況の中、どれだけ関東圏での認知度を高められるか。今後5年間の取り組みが開業後の明暗を分ける。