プリウス・バブルの副作用、絶好調の裏で始まったトヨタの“内なる崩壊”
確かに3代目となる新型プリウスの下取りで最多なのは、2代目の旧プリウス。ところが意外なことに「クラウン」などの下取りも多いという。クラウンといえば、国産高級車の代名詞。“いつかはクラウン”のコピーどおり、所得が上がるにつれ最終的にたどり着くクルマで、社有車も多い。販売するトヨタ店にすればクラウンのオーナーは、いわば黙っていても買い替えてくれる優良顧客だ。それが値段の安いプリウスに流れることは、いくら台数が稼げるとはいえ、採算低下に直結する。
あるトヨペット店では、古い「マーク�」からの買い替えが後継の「マークX」でなく、プリウスに向かっている。「マークXになって性能は上がったが、クルマとして目新しさがない。それが今回、『プリウスってどんなものだろう』と、客を呼び込んでいる」(トヨペット店幹部)。
6月の販売ランキングを見ても、「カローラ」などが前月比で伸びた反面、ウィッシュや同じくミニバンの「ヴォクシー」は落ち込み、プリウス特需がトヨタ車全体の販売に寄与していないことは明らかだ。プリウス絶好調の陰で、既存モデルが食われるという皮肉。だが、売れ筋がプリウスしかない中では、系列販売店もプリウス1点に経営資源を集中せざるをえない。結果、客の奪い合いはエスカレートし、現場でクルマを売る系列販売店同士では仁義なき闘いが勃発している。
「新型プリウスは名古屋トヨペットで」--。新型プリウス発表直後の5月20日、名古屋駅前にある「ナナちゃん人形」の前で、名古屋トヨペットが移動展示会を開いた。実車2台を並べたうえ、店名の入ったポケットティッシュを配布。続く23・24日には、名古屋市栄の商業施設「ラシック」で、愛知トヨタ自動車が即席ショールームを設置、愛知トヨタののぼりを高々と掲げた。
「プリウスなら今や誰でも知っている。われわれが宣伝したいのはお店のほうですよ」。あるトヨタ店の役員も、ライバル意識むき出しだ。
3代目プリウスになって初めて、4系列全店に販売を“開放”したトヨタ。新型プリウスのチャネル別内訳は、トヨタ店27%、トヨペット店28%、カローラ店21%、ネッツ店24%と、きれいに4等分。店舗の多いネッツ店やカローラ店が新たに加わり、トヨタ店とトヨペット店からシェアの半分弱を奪った計算になる。受注好調で値引きは以前より少ないとはいえ、全店取り扱いによる競争激化は、半端でない。