なぜ、東大生の英語は「通じない」のか? 受験英語を極めてはいけない理由

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和文英訳を意識すれば「ミスをなくそう」とします。人に伝えることを意識すれば「わかりやすく見せよう」とします。日本人とアメリカ人の英文の「見た目」が違う原因は、ここにあります。

英語を使うときはミニマリストになる

――それでは、「伝わる英語」の秘訣とは何なのでしょうか?

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余分なものを捨てることです。英文を書くときは、「ひとつの文に含まれる単語の数」をできるだけ減らすことを心がけてください。いわば「ミニマム・センテンス」です。

近年、ミニマリストのような、自分に必要なものを見極め、できるだけ「モノを持たない」ライフスタイルが注目されています。同じことが、英文作成にも当てはまります。名詞と動詞を中心に、ひとつの文を「より少ない単語数で書く」ことを意識してみましょう。

もちろん、形容詞や副詞を「一切使うな」ということではありません。ひとつの文で使う単語数を減らし、状況に応じて文の数を増やすことによって、「情報を小出しにする」ことが可能になります。そうすれば、形容詞や副詞も有効活用できます。

最初の例文をもう一度見てみましょう。

A strikingly beautiful young woman delightedly bought a small but expensive piece of jewelry.(目を見張るほど美しくて若い女性が、嬉しそうに、小さいけれども高価な宝石を買った)

 

このひとつの文を、複数の「ミニマム・センテンス」に作り変えてみましょう。

A woman bought a piece of jewelry.(女性が宝石を買った)
It was small.(それは小さかった)
But, it was expensive.(しかし、高価だった)
She was young.(彼女は若かった)
She was strikingly beautiful.(彼女は目を見張るほど美しかった)
She looked delighted.(彼女は嬉しそうだった)

 

全体として言っていることは同じですが、ひとつの文の語数を「必要最小限」にすることを意識して、内容を「小分け」にしています。見た目もシンプルで、伝わりやすいものになっているのがわかると思います。

この手法は、ビジネスの現場で「英語を話す」力に直結します。短い文は、単純に「話しやすい」のです。難関校の受験で遭遇するような長い英文は、たとえ「文法的に正しい」ものであっても、即座に「自分の考えを伝える」ことには不向きです。

ある程度「英語はできる」はずのビジネスパーソンが、「完璧な(ミスのない)英語」を意識してしまうことによって、かえって何も話せなくなってしまう。そういう話をよく聞きますが、その原因はここにあります。

できるだけ「少ない語数」で文を作り、「誰が何をしたか」「何が起こったか」といった事実を端的に伝える。そのうえで、必要に応じて情報を補足する。そのスキルを身につけ、それを習慣化することによって、自然に「伝わる英語」が使えるようになるのです。

青野 仲達 ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授

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あおの ちゅうたつ / Chutatsu Aono

ブルーフィールド株式会社代表取締役社長。早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業。アメリカン・エキスプレスを経て、ハーバード大学経営大学院(Harvard Business School)にてMBAを取得。米国ボストンで世界最大級のオンライン英会話スクールとなったイングリッシュタウンの創業に携わり、2004年に株式会社GABA(Gabaマンツーマン英会話)を設立、2006年に代表取締役社長として東証マザーズ上場を果たす。著書に『MBA式英語学習法』(PHP研究所)、『リーダーになる人の英語力』(かんき出版)、『グローバル時代を生き抜くための ハーバード式英語学習法』『欧米人を論理的に説得するための ハーバード式ロジカル英語』(秀和システム)などがある。

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