なぜ、東大生の英語は「通じない」のか?

受験英語を極めてはいけない理由

 この文には「文法上のまちがい」はありませんが、すぐには「何が言いたいのか」がわかりません。見た目も煩雑です。その原因は「strikingly(目を見張るほど)」「young(若い)」「delightedly(嬉しそうに)」など、形容詞や副詞で文を飾りすぎているからです。

装飾性の高い形容詞や副詞を多用すると「印象=impression」が先走ってしまい、肝心の「事実=fact」が見えにくくなります。それが形容詞や副詞の特性なのです。

一方、名詞と動詞は「誰が何をしたか」といった事実を伝えます。印象は人によって変わりますが、事実は誰にとっても同じです。ですので、形容詞や副詞をなるべく避け、「名詞と動詞で書く」ことによって、文は伝わりやすくなります。

上記の文から形容詞と副詞を省くと、次のようになります。

A woman bought a piece of jewelry. (女性が宝石を買った)

 

この英文は要点を簡潔に伝えていて、見た目もすっきりとしています。

――なるほど。たしかに前者のほうが「英語ができる」人が書いた文のように見えますが、要点がさっぱりわかりませんね。反対に後者は端的に伝えたい内容がわかります。こうした英文を書く人はどのような人なのでしょうか?

後者のような見た目がすっきりとした英文は、ハーバードに限らず、欧米の優秀な学生が書く文章によく見られます。

受験勉強(和文英訳)が生む、「伝わらない」英語

――英文の見た目が違うのは、それぞれの国の教育が影響しているのでしょうか?

青野 仲達(あおの ちゅうたつ)ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授。早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、外資系企業勤務を経てハーバード大学経営大学院にてMBAを取得。2004年に株式会社GABA(Gabaマンツーマン英会話)を設立、代表取締役社長として2006年に東証マザーズ上場。現在は大前研一氏が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)で英語カリキュラムの設計に携わる。

はい。特に日本の受験勉強の影響は大きいと思います。たとえば、私たちは「英語を書く」と聞くと、瞬間的に「和文英訳」を連想します。それが英語を書いた、ほとんど唯一の体験だからです。そのため、多くの日本人にとっては「英作文=和文英訳」になっています。

ところが、ここに落とし穴があります。

和文英訳の「和文」は「自分の考え」ではありません。試験のための無味乾燥な文章です。英作文と言いつつ、やっていることは文法事項の確認なのです。つまり、そこでは「自分の考えがあるかどうか」「それが伝わるかどうか」はまったく問われません。ですので、従来の大学受験や検定試験では「自分の考え」がなくても満点が取れます。それが日本の英語学習の「ローカル」なルールです。

一方、世界標準の「グローバル」なルールは真逆です。「自分の考えを伝える」ことがすべてなのです。受験を念頭に置いた伝統的な英語学習では、その点がまったく考慮されていません。とても不思議な話です。

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