補正予算で厚遇されるテレビの地デジ化、2年後にはタダでテレビを配る?

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支援実施のための体制も決定的に違う。日本は説明会や独居老人訪問のための体制を東日本、中日本、西日本に分けてゼロから立ち上げ。電通を事務局とする1000人規模の専用体制を立ち上げ、今年度だけで前述のように88・2億円の予算があり、11年度までの3年合計では250億円を見込んでいる。

これに対して英国では、BBC(英国放送協会)が受託。6億0300万ポンドはすべてコミコミの予算だ。米国ではボーイスカウトなどの地域ボランティアの協力を得て高齢者対象の説明会の説明会を開催。また貧困家庭や一人暮らしの高齢者への配食を行うNPOが、配達の際にデジタル化に関する聞き取りや説明を行うなどしていた。

それ以上に米英との大きな違いは、民間企業であるテレビ局への支援の有無だ。日本では、テレビ局のデジタル中継局の支援整備などにも補助が出る。テレビ局への支援以外でも辺地共聴施設や都市受信障害施設の改修支援など受信設備環境の整備に相当額の支出をするが、米英ではこうした予算はない。

そもそもテレビを見ようが見まいが個人の自由であり、本当に必要と感じれば自ら視聴環境を整えてしかるべきだ。独身若年層を中心にテレビを見ない世帯も増えており、11年7月のアナログ停波までの100%世帯普及、1億台普及という目標は、極めて不自然。目標が不自然なために、不自然な大盤振る舞いがまかりとおる。

「説明会をしようが、購入支援をしようが、普及率はなかなか上がらない。普及率37・1%の沖縄県のように極端に低い地域もあり本当に頭が痛い」と関係者はため息をつく。

石川県珠洲市では7月、全国に先行してアナログ停波のリハーサルを行う。まだデジタルへの対応をしていない世帯も多いが、「ギリギリまで待っていれば液晶テレビをタダでもらえる」というのが地元民の間で語られているうわさ話だ。

今から2年後--。大盤振る舞いの帰結として、最終的には日本中にタダでテレビを配るという、冗談のようなバラまきが現実のものになりかねない。

(週刊東洋経済)

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