補正予算で厚遇されるテレビの地デジ化、2年後にはタダでテレビを配る?
デジタル難視聴対策である「後発民放のデジタル新局等の整備支援」は、その際たるもの。民放は、古くからある先発の老舗局と「平成新局」と呼ばれる開局から年月の浅い後発局の大きく二つに分けられる。後発局は先発局に比べて収入が少ないうえに、財務基盤も貧弱。その結果、家庭に電波を届ける中継局の整備について、放送対象地域内のすべてのエリアを100%カバーできていないところが多い。
ところが、今回の補正予算では、後発民放がアナログの中継局未整備のエリアにデジタル中継局を新設する際、国が建設費用の2分の1を負担することになった。簡単に言えば、アナログからデジタルへの切り替えに乗じて、後発局を支援する制度を作ったのだ。
先発局も後発局と中継局を共同建設する場合には、後発局と同様の補助を受けられるという一定のメリットはある。ただ、そうはいっても、わざわざ補正予算を組んで、国が後発局を支援する必要がどこにあるのか。ある先発民放の幹部は「本来であれば、後発局の自助努力で中継局を建設するのが大前提」と言い切る。
補正予算の中でもう一つ、必要性が疑問視されるのは「集合住宅に対するデジタル化対応の促進」だ。
これはマンションなどの集合住宅で使われている共聴施設の改修費用やケーブルテレビの移行費用の半額を負担するという制度。規模の小さな共聴施設や老朽化した共聴施設は、一般に改修工事費が大きくなりやすいため、地デジへの移行が遅れていた。そこで改修費の最大2分の1を国が負担し、移行を促進しようというのが総務省の狙いだ。
これに87・5億円の予算がついているが、問題は補助の条件だ。1世帯当たり3・5万円以上の負担がなければ対象とならず、補助率が2分の1になるのは7万円以上の負担がある場合だけ。「1世帯当たりの負担額が3・5万~7万円の層が最も多いと見られる。そうすると、補助金を申請しても、もらえる額は数千円程度にすぎない。使い勝手が悪く、食いついてこないのでは」と業界関係者は懸念する。しかも対象はあくまでも集合住宅のみで、戸建て住宅には、辺地や受信障害対策の共聴施設で受信していない限り、同様の補助がないという不公平感もある。