なぜハーバード生に「日本旅」が人気なのか? 例年、予約枠が争奪戦になるワケ
ヴォンク:それから、ジャパン・トレックというのは、ハーバードで長年、人気のツアーなのです。私は前年に参加した人に感想を聞いたのですが、「本当に楽しかった」と言っていたので、これはぜひとも参加しなくては、と思いました。
日本人の同級生が、私たちだけのためにプライベートツアーを実施してくれるなんて、これほど最高の機会はないでしょう。彼らが知っている「日本のいちばんいいところ」を案内してくれるわけですから。私にとっては、一生に一度のチャンスだと思いました。
佐藤:特に日本のアニメーションやハローキティのファンだったから、日本に行きたかった、というわけではなかったのですね。
ヴォンク:5、6歳のころ、ハローキティのアクセサリーを持っていた記憶がありますが(笑)、それで日本に行きたいと思ったわけではないですね。
最も印象に残ったのは広島
佐藤:京都、広島、箱根、東京とまわったそうですが、どこがいちばん印象に残っていますか。
ヴォンク:ひとつを選ぶのは難しいですが、「いちばん好きだった場所はどこですか」と聞かれれば、やはり広島でしょうか。
広島には原爆投下という痛ましい歴史があります。広島の人々がどれほど大変な思いをされたか。それは私たちの想像を超えるほどでしょう。でも私たちが実際に広島を訪れ、原爆投下がもたらした被害や広島の復興の歴史について、広島の方々から直接聞くことは、非常に重要なことだと思いました。ジャパン・トレックでは、原爆ドームや資料館を訪れましたが、この体験は私にとっても大きな学びとなったのです。
広島を訪れ、日本という国が、原爆投下のもたらす惨禍を世界に伝えようとしていることを実感し、私は深い感銘を受けました。誰かを責めるわけでもなく、非難するわけでもなく、ただ核兵器のもたらす悲惨さを世界に伝える。こうした日本の姿勢には頭が下がる思いです。広島での体験は、私の感情を深く揺さぶるものでした。
佐藤:ヴォンクさんはアメリカ人ですから、小学生や中学生の頃にはアメリカの立場から原爆投下について学んだわけですよね。広島に行ったことで、原爆投下という歴史的事実に対する見方は変わりましたか。
ヴォンク:その頃の私にとっては、教科書に書いてある「何千マイル離れた場所で起きた過去の出来事」でした。でも実際に広島を訪れ、何が起きたかをこの目で確認し、被害を受けた方々から話を聞くと、原爆投下という悲惨な歴史を現実のものとして感じることができました。
繰り返しになりますが、被爆国としての日本の姿勢を私は心から尊敬しています。こんな悲劇がおきたのはアメリカのせいだ、と責め立てることだってできたはずです。でも日本はそれをしなかった。その代わりに日本は何をしたか。子どもたちに修学旅行で広島を訪れてもらうようにしたのです。子どもたちは平和の象徴としての折り鶴を捧げ、平和を祈る。そこには報復する気持ちも憎しみもありません。ただ核廃絶を願う心のみです。これは私にとっては想像だにしなかったことでした。
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