「失礼します。受験番号〇〇番の××です」と名乗り面接試験の部屋に入ると、初老の男性が椅子に腰かけ腕組みをして、体を揺らし、ウトウトしている風であった。入室すると突然ブザーが鳴り、その男性は目覚めたかのような様子を見せたという。まるでわざわざ高齢者を装う感じだ。
……早速、入学試験会場とは思えない異次元空間である。多くの受験生はこの状況設定に、まず面食らったであろう。
口頭試問ではない風変わりな試験が開始され、受験生は試験の注意事項が書かれた目の前の用紙にまず目を通す。そこには、次のようにある。
正確な説明がないと「想定外」な図に
以上が聞き取り調査による試験の概要だ。何とも不思議な印象の試験である。この2次試験を受験した私の教え子は、次のような感想を抱いた。
Aさん(女性)「まず私は、男性に紙の左側に三角形を描いてくださいと言いました。ところが、私の意に反して、とても小さな三角形を左の下側に描かれてしまい困りました。同じ左でも上なのか下なのか、図形の大きさは具体的にどのぐらいなのか、きちんと言わなかったことが失敗の原因だと思います」
Bさん(男性)「私は三角形と、円の中の星までは描かせることができました。けれども、1分間という時間では右側の正方形まで描かせることができず、図を完成させることはできませんでした。とにかく時間が足りませんでした」
なるほど。2人の取材から推察するに、被験者役の初老の男性は教授か職員と思われ、受験生から正確な説明がない場合には、想定外の行動をとっているということなのだろう。
Aさんも後に気付いているように「紙の左側に三角形を描いてください」とただ説明するだけでは、描き手は描く位置と大きさを特定できず戸惑い、小さな三角形を左下に描くというような行動に出てしまうのだ。
そういった点を踏まえて、正確でわかりやすい説明を考えてみよう。
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