急増する公立中高一貫校、広がる選択肢、魅力は学費の安さ!《本当に強い中高一貫校》
東京都立小石川中等教育学校(文京区)は、東京府立五中に始まり、「小石川教養主義」と呼ばれるリベラルアーツ重視の校風を持つ小石川高校を母体に設けられた。7割は実験という理科の授業をはじめ、科学に対するリテラシーを養う理数教育に定評があり、高校からは、海外の科学論文コンクールで毎年のように入賞者を出している。
公立には私立のような建学の精神がないといわれるが、90年前の開校以来の校是にある「自ら志を立て、自らが進む道を自ら切り拓き、新しい文化を創造するという五中精神のエッセンスはこれからも小石川を貫いていく」(栗原卯田子校長)と、伝統に立脚した学校づくりを強調する。
伝統校の一貫化について、千葉中は「東大合格者を増やし、伝統復活という考えも一部にはあった」と認める。だが、公教育がエリート受験校化に舵を切るわけにはいかない。そこで、浮上したのが、次世代リーダーの育成という方向性だ。この種の教育目標を掲げる公立一貫校は多い。
次世代の人材を育成 国際化対応で英語重視
次世代リーダーとして必要とされるのが「国際人としての教養」と位置づけ、神奈川県では「かながわ次世代教養」の授業を設けた。今年度開校の県立相模原中等教育学校(相模原市)は、英語を使って伝統文化、歴史、地球環境問題を紹介、説明できるようになることを目指す。
新たな学校への意気込みを示すかのように、公立一貫校では海外研修も盛んだ。静岡県立浜松西高等学校中等部(浜松市中区)は、中学3年で、シンガポール、マレーシアで海外研修旅行を行う。昨年から現地ガイドの付き添いをやめ、現地の人に英語で尋ねながら目的地を目指す「サバイバル・イングリッシュ」を体験。現地の学校とも交流する。
小石川の語学研修はオーストラリア・アデレードに2週間ホームステイして、現地の学校に通う。現地の教育局の協力で、ホームステイ先の事前調査など準備も万端に行い、旅行業者任せではない「手作り」の研修を作り上げた。
将来のリーダー育成を目指す一貫教育の6年間は、学校側の生活指導に対する考え方にも影響を与える。相模原の田中均校長は「6年間も生徒を預かるのだから、学校の生活指導の責任は重くなる。しつけをしっかりして、自分を大切にする生徒を育てたい。社会に貢献するリーダーは、人のために汗をかくことの尊さを知らなければ」と、生徒と校庭の草取りをするところから始める。