スバルの4WDが雪国で圧倒的に愛される理由 この安心感は乗り手の期待を裏切らない

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筆者は今回、北海道の公道とテストコースで、スタッドレスタイヤ付きのスバル車をドライブしたが、一部の4WDのように、前輪が空転してから後輪に駆動力を配分するのではなく、最初から4輪に力を分配しているので、スッとあっけなく発進、加速していける。これだけで安心感がかなり違う。

実際の経験に基づいて4WDを開発

北海道でスバル車をドライブし、雪道を体験

試乗後にスバルのエンジニアが口にした「発進でスリップすると穴を掘って進めなくなることもありますから」という言葉が印象的だった。机上の計算ではなく、実際の経験に基づいて4WDを開発していることが理解できた。

もうひとつ雪道をスバルの4WDで走って感じたのは、必要以上に細かい制御を行わず、自然な運転感覚を重視していることだ。凍結路ではアクセルやステアリングを少しでも多く操作すると突進してしまうので、繊細な操作が必須となるが、余計な制御を入れていないので、そのコツを掴みやすい。

雪道や凍結路は自然が作った道であり、状況は千差万別だ。どんなに緻密な制御を用意しても想定外はあり得るし、制御を複雑にすることで動きが不自然になるというのは他の分野でもよくある。凍結路での不自然な挙動は不安につながる。スバルはそのことを知り尽くしているのだろう。

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スポーツモデル向けとしてセンターデフを組み込んだVTD方式、MT車向けのセンターデフ+ビスカスLSD方式などがある

ここまでアクティブトルクスプリット式について解説してきたが、スバルの4WDはこれ以外に、CVTのスポーツモデル向けとしてセンターデフを組み込んだVTD方式、MT車向けのセンターデフ+ビスカスLSD方式、MTのスポーツモデル向けとしてドライバーが設定を変更できる電子制御LSDを組み込んだDCCD方式がある。販売台数100万台以下のメーカーとしては異例の陣容だ。

前後輪への駆動力配分は、アクティブトルクスプリット方式の60:40に対し、センターデフ+ビスカスLSD方式が50:50、VTD方式が45:55、DCCD方式が41:59と、スポーツ性を重視する方式ほど後輪の駆動力を増やしており、多彩なニーズにきめ細かく応えている。確かにアクティブトルクスプリット方式からVTD方式に乗り換えると、身のこなしはより軽快で、アクセルを踏むとリアから回り込むようにコーナーを脱出していくことが体感できる。

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