スバルの4WDが雪国で圧倒的に愛される理由 この安心感は乗り手の期待を裏切らない
富士重工業が初めて4WDを製作したのは1971年。もともとは市販目的ではなかった。白洲次郎が初代会長を務めたことでも知られる東北電力が、積雪路を走れて、なおかつ快適に移動できる車両を求めたところ、宮城県のスバル販売店が依頼に応じ、当時のスバル「1000」をベースに日産自動車「ブルーバード」の後輪駆動機構を組み合わせた4WDを試作した。
乗用車タイプの量産4WDは世界初
この車両はすぐに富士重工業に持ち込まれ、テストの結果、市販を決定。同年登場した新型車「レオーネ」のバリエーションとして、1972年に発売した。SUVではない、乗用車タイプの量産4WDとしては世界初だった。
このときはスズキ「ジムニー」と同じように、レバー操作で2WDと4WDを切り替える方式だった。前後輪がプロペラシャフトで直結してあるので、内輪差が生じる右左折時などでは前後の回転差が抵抗になって走行を妨げる「タイトコーナーブレーキング現象」を発生した。そのため舗装路では2WDに戻す必要があったのである。
この問題を解決すべく、スバルが世界で最初に投入したのが、現在多くの4WDが採用する多板クラッチだ。1981年、スバルは2代目レオーネに新しいボディとしてツーリングワゴンを用意すると、ATの油圧を用いた多板クラッチを導入。走行状況に応じてクラッチの締結力を調節することで、2WDと4WDの切り替えを不要にしたのである。
現在のスバル4WDの中核となっているのが、これを電子制御化したアクティブトルクスプリット方式で、CVT(無段変速機)と組み合わされる。しかし、似たような電子制御多板クラッチを用いるほかの多くの4WDとは、考え方が大きく違う。
多くの電子制御多板クラッチ採用4WDは、舗装路では基本的に2輪駆動、つまり前輪駆動ベースなら駆動力配分は限りなく100:0に近いのだが、雪道などでタイヤの回転数が前後左右で異なったりすると、センサーがそれを感知して残りの2輪にも駆動力を配分する。
対してスバルのアクティブトルクスプリット方式は、前述のように前後直結によるタイトコーナーブレーキング現象をなくすための多板クラッチ採用なので、基本は前後軸重配分に合わせた60:40としており、さらなる駆動力が欲しいときにはクラッチを締結状態に近づけて50:50に寄せて、逆に舗装路では後輪への駆動配分を減らして燃費向上に役立てている。
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