中学受験の不合格をどう受け止めたらいいか 「子どもの出来は親次第」という幻想

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それはときに非常に苦しい。つい手を出してやりたくなってしまうことも多い。だが、求められてもいないのに、親が子どものやることに勝手に手を出すことは、子どもに「あなたは私がいないと何もできない」というメッセージを伝えることにほかならない。それではいつまでたっても精神的に自立できない。自分の人生を生きている実感を味わえない。代わりに生きづらさを感じながら生きることになる。自分ではない誰かのせいにしながら、誰の人生だかわからない人生を歩むことになる。

有名大学出身の親が、自分と同じように育てたからといって子どもが同じように有名大学に行けるわけではない。しかしだからといって、その子が、その親よりも不幸な人生を歩むことになるわけでもない。親よりもよほど幸せで充実した人生を歩むかもしれない。

「合格=勝者、不合格=敗者」ではない

『追いつめる親 「あなたのため」は呪いの言葉』(おおたとしまさ著、毎日新聞出版)「あなたのため」という言葉を武器に過干渉を続ける親に育てられ、「生きづらさ」を感じ、自分らしく生きられない子供側の様々なケースを紹介。教育虐待の闇を照らす。上の画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

逆に、ギリギリまでお尻を叩いて追い込んで、結果的に第1志望合格を成し遂げたとしても、その後、まったくやる気を失ってしまうこともある。親の思い通りの人生を歩んでいるように見えて、実は本人は生きづらさを感じている場合もある。

毎年、中学受験で本当の意味での第一志望校に合格できるのはごく一握りの子供だけ。しかし「合格=勝者、不合格=敗者」なのではない、大事なのはそこから何を学ぶかだ。

人生における選択の善しあしは、決断したときに持っている情報量やそのときの判断力が決めるのではなく、その後の努力が決める。それが入試の選択問題とは決定的に違う。どんな不利な選択肢を選んだとしても、あとからその選択肢を最善のものに変えることができる。それが人生だ。

子育ては思い通りにならないことの連続。子育てにおいて大切なことは、起きてしまったことを否定するのではなく、それを糧にするにはどうしたらいいかを考えることだ。望ましくないことが生じてしまったとき、それを今後の糧にすることができるかどうかが、その人の強さである。親も強くならなければいけないし、子どもにもその強さを学んでもらわなければいけない。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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