「サードウェーブ系男子」を知っていますか

脱消費時代が生み出した、その生態系に迫る

(Illustration:Koji Wakisaka)

一方、ブルーボトルコーヒーに代表される「サードウェーブ」は、「シアトル系」に次ぐ、新しい流れのコーヒー店の総称。美味しいコーヒーとくつろぐための時間と空間を提供するだけでなく、豆の買い付け過程でのフェアな貿易を標榜し、大量生産大量消費型に流されない価値観なども提示している。

「サードウェーブ系男子」がブルーボトルに出かけていくのは必然。両者の背景には流行に流されないというアイデンティティ、「脱消費」という新しい価値観が共有されている。その意味で辛酸氏のネーミングは的を射ていたのだ。

人は流行に飽きてきている

さて、アメリカでの「サードウェーブコーヒー」に代表される新しい価値観とは、リーマンショック以降の意識の変化に伴って生じたものであると社会学者のリチャード・フロリダは指摘する。彼の言葉で言えば「グレート・リセット」になるが、これはつまり「脱消費」的な価値観である。この変化は主に食に現れた。

自然でオーガニックな食材を使った料理が見直され、家庭菜園が定着し、地元の工房がつくったクラフトビールが大流行。フィルターで入れるコーヒー=サードウェーブの登場もこういった食の革命の中から生まれたもの。大量生産型農業、大規模運輸業、そして巨大小売チェーン。これらで構成されるメガフード産業は、現代アメリカで批判の対象になり、「脱消費」や「オーガニック」が、こうした産業へのオルタナティブを示す旗印になっているのだ。

これを踏まえると、「サードウェーブ系男子」は単なる流行ではなく、ある種の政治性、具体的には「脱消費」「オーガニック」「都市型リベラル」といった考え方を伴ったライフスタイルであるという見方ができる。

一方重要なのは、「脱消費」的価値観がすべてのアメリカ人に共有されるものではないという点。これらは、年収10万ドル以上、大都市に住む白人リベラル層に特有の意識変化でもある。つまり、これは「中流の没落」や「格差社会」に伴って浮上してきた「新富裕層」向けの価値観でもあるのだ。

日本でもメディア系企業やIT系企業に勤め、比較的高い給与を得る比較的リベラルな都市住民たちが存在する。そんな存在のブームに対して、ネットで反発が起こるのは必然。つまりは「サードウェーブ系男子」論争とは、持たざるものと持つものとの格差が生んだ政治闘争だったのかもしれない。

または、どちらも買いかぶりなのかもしれない。「脱消費」という新しい運動に意識的だった人々が、結果として画一的なスタイルに陥ってしまった。そんな「皮肉」な見方もできる。「脱消費」すらも、ブームとして消費されてしまう現代である。さもありなん。

「サードウェーブ系男子」だけでなく、身の回りのモノを極限まで減らした「ミニマリスト」の登場も2015年のこと。日本版「脱消費」運動がそれなりに盛り上がっていた。「流行」が流行し始めたのは、消費社会が始まった1920年代といわれているから、もう100年近くも流行が流行していることになる。そろそろ人は流行に飽きてきているというのもまた真理なのかも。

(文:Kenro Hayamizu)

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