自然界は独創力を刺激するアイデアの宝庫だ ナイキのデザイナーたちは山羊を観察した
自然界に触発されるということは、例えばトンボの羽にヒントを得るように、ただ構造やパターンを見習うということに限定されるのではない。
自然にヒントを求めるのは、巨大企業や偉大な発明家たちの常套手段なのだ。クリエイティブな思考の持ち主は、自然界から盗めるものを探しているのではなく、自然界から学ぼうとするのだ。自然界を観察し、様々な問題を解決するために最高のアイデアを真似しようとするのだ。
ナイキのデザイナーたちは山羊を観察した
ナイキのデザイナーたちは、オレゴン動物園で山羊(ゴート)を観察した成果を反映させて全天候ゴーテック・トラクション[山羊の蹄のようなひっかかりがあるという意味]を開発した。
クラレンス・バーズアイは、カナダを旅行中に天然に凍りついて解凍された魚を食べた。この自然の知恵をバーズアイが活かし、冷凍食品産業が生まれた。ルネ・ラエンネック医師は子どもたちの遊びを観察していて、聴診器の発明につながる発見をした。子どもたちは長い筒の一端を耳にあて、筒の反対側で鳴っている音が増幅されて伝わるのを聞いて遊んでいたのだ。
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーは嵐の中を出航し、さらに船のマストに自らを縛りつけて自然の威容を観察して絵を描いた。ヨーン・ウツソンは、昼食のときに食べていたミカンの切れ端を見ていて、シドニー・オペラハウスの、あの一目見たら忘れられないデザインを思いついた。オペラハウスを構築する14片のシェル構造は、組み合わせれば一個の完全な球体になるのだ。
ジョルジュ・ド・メストラルは田舎を散策していて、野草の種が被服にくっつくことに気づいた。種についている微細な鉤を真似て開発されたのが、ヴェルクロ(面ファスナー)なのだ。新幹線の車体はカワセミの流線形のクチバシに倣ってデザインされた。互いにぶら下がり合いながら成長するツタが描く懸垂曲線がヒントになって、吊り橋の構造が考案された。鳥の歌声に刺激を受けた作曲家も大勢いる。オリヴィエ・メシアンを筆頭に、ベートーヴェンや、ヘンデル、マーラーやフレデリック・ディーリアスもそうだった。
シリコン・バレーで活躍する企業の多くは、組織を生きもののように有機的に構成している。そうすれば急激な変化に対応して組織を再編成しやすく、市場の展開に反応しやすくなるからだ。
あなたの職業が何であれ、必ず自然界の中に存在する何かと関連がある。動植物を、そして鉱物を観察してみよう。必ず教えられることがある。資源の貯蔵庫として自然を見るのではなく、アイデアの宝庫として見てみよう。
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