東京都が2015年7月にまとめた広域交通ネットワーク計画では、37の鉄道構想について検討を行っている。それによると、蒲蒲線の収支採算性はAランク(累積資金収支黒字転換年が40年以内)で、費用便益費(B/C)も1.0以上のAランクとされたが、「高齢者を含めた誰もが快適に移動できる都市づくり」「都市の活力の維持向上」などといった目標への寄与度は、やや低いBランクとされた。
その結果、蒲蒲線は「整備について優先的に検討すべき路線」からは除外され、ワンランク低い「整備について検討すべき路線」とされた。都が蒲蒲線の優先度を下げた以上、交政審の新答申でも優先度を下げて盛り込まれる可能性がある。
実際、蒲蒲線の計画にはいくつかの大きな課題がある。たとえば、東急線と京急線は2本のレール幅(軌間)が異なるため、通常の車両では直通できない。東急車と京急車の乗り換えポイントを、どこかに設ける必要がある。
大田区が現在想定している案によると、東急多摩川線の矢口渡駅と京急空港線の大鳥居駅から、それぞれ蒲田駅の地下に乗り入れる単線の線路を整備。蒲田駅の地下には1面2線の島式ホームを設置し、ホームの北側に東急線からの線路、南側に京急線からの線路を設ける。この方法なら、東急車と京急車の乗り換えは同じホーム上で行うことができ、乗り換えの抵抗感も下がる。
幻のルートは実現するのか?
とはいえ、確実に乗り換えが発生する以上、「高齢者を含めた誰もが快適に移動できる都市づくり」という目標に寄与するかどうか、疑問の残るところだ。軌間可変電車(フリーゲージトレイン)による直通化も考えられているが、日本では営業運転の実績がなく、特殊な機構を搭載するため車両のコストも高くなる。採算性にも大きく影響するだろう。
そもそも、京急空港線は輸送力が限界に近づきつつあり、東急・JR蒲田駅方面からの列車を新たに割り込ませるだけの余裕はないはずだ。まずは蒲蒲線を建設する前に、空港線自体の輸送力を強化する必要があるだろう。
蒲蒲線が、幻に終わった羽田航空電鉄や東京モノレールの計画を引き継ぐ路線として整備できるかどうか。その答えが出るまでには、もう少し時間がかかりそうだ。
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