信託銀にも再編観測、「完済」微妙な中央三井、「優等生」住友信託にも不安

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信託銀にも再編観測、「完済」微妙な中央三井、「優等生」住友信託にも不安

断念--。5月15日に行われた中央三井トラスト・ホールディングスの2009年3月期決算会見。田辺和夫社長は、今年8月までの実施を目指していた公的資金(残高2000億円)完済スケジュールについて「客観情勢はきつくなっており、慎重に考えたい」と述べ、当面、先送りする可能性を示唆した。

同社の今年3月期の決算は、経常損益が前期の1253億円の黒字から1169億円の赤字に転落、最終損益も920億円の赤字(前期は718億円の黒字)へと沈んだ。

原因は、保有株式の売却や値下がりに伴う多額の損失計上だ。特に痛撃だったのが株式売却損。中央三井信託銀行と中央三井アセット信託銀行の傘下2行合わせて、簿価ベースで2482億円の保有株を処分し、1133億円の売却損計上を迫られた。あえて“損切り”に踏み切った理由を同社では「相場変動が経営に与える影響を軽減するため」と説明するが、銀行関係者の間では「どうせ減損計上を余儀なくされるのなら、売却損を出してでも保有株を資産から切り離してリスクアセットを圧縮することを優先させたのではないか」(地銀大手首脳)との声も飛ぶ。つまりは自己資本対策だ。

同社の連結自己資本は3月末で8918億円と、前年同期比20%強目減りした。今回の保有株売却によるリスクアセットの圧縮効果(約4400億円)がなければ、08年3月末比で1・8ポイント悪化した自己資本比率の落ち込みがさらに拡大していた。メガバンク関係者の中には「公的資金との早期決別に完全に赤信号が灯る可能性すら否めなかった」と指摘する向きさえある。

不良債権予備軍が膨張 傘下ノンバンクも大赤字

「変事に対する抵抗力に、総じて難のあることが浮き彫りになった」

このほど出そろった信託専業大手の3月期決算を分析した金融庁関係者は、こんな感想を漏らす。

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